3連休であった。
きちんと堪能しなければ、という思いが先走り、強迫観念となり、焦燥するという、いつものパターンを踏襲しつつ、しかし実際そこまで「やらなければならないこと」を抱えているわけでもなかったので、基本的にのんびりと過した。そんな感じの3日間だった。
びっくりするくらい対外的な予定のない両親に対し、子どもたちは地域のクラブ活動や部活など、わりといろいろあった。そのため大掛かりなお出掛けをする機運が高まらなかったというのもある。なによりひどく暑かったため、レジャーの予定なんてないくらいでちょうどよかった。生きているだけで精一杯だった。
それでも初日、土曜日の午後に、4人で海へと繰り出した。多伎のきららビーチである。人がとんでもないことになっているかな、と思いきや、それなりに人はいたが、そこまでではなかった。きちんと泳ぐつもりはなかったが、レジャーシートやタオル、体を流すための水を詰めたペットボトルなどは念のため持って行っていて、格好も僕は、ズボンの下に、下着ではなく、筋トレをする際に穿く、トランクスよりもともすれば丈が短いような短パンを穿いて、足元を波に浸して遊ぶ、よりは少し本格的に、膝より上くらいまで海の中に入る感じでしばし子ども(言うまでもなくファルマンは靴を脱ぎさえしない)とともに戯れたのだけど、こんな半端なことをするくらいなら、下は水着にしてきて、自分だけでも急に泳ぎ出すということをすればよかったな、と少し後悔した。レジャー的に、海がプールに勝っている部分なんてあまりないよな、と思っていたけれど、いざ夏になり、脚で波を感じてみてれば、やっぱり海には海の良さがあるな、と思った。今度行ったときは本当に泳ごうと思う。
ちなみに消しゴムマジックは使っていない。島根県的に、「それなりに人はいた」。
晩ごはんは、手羽先のフライドチキンと、マカロニサラダ。そしてもちろんビール。海で陽を浴びたあとのそれは、格別だった。泳いでいたらもっとよかっただろう。
翌日は、午前中に買い物。買い物から帰り、買ってきたものを冷蔵庫に詰め、昨日の晩ごはんの残りやおにぎりなどで昼ごはんにしたあと、アイスコーヒーでも飲もうと思い冷蔵庫を開けたら、冷蔵庫の照明が切れていた。なんか照明が切れているな、と思い、ファルマンにそのことを伝えたら、電源は入っているのかと訊ねてきたので、前面のタッチパネルを確認したところ、うんともすんとも言わないのだった。たった数十分前、買ってきたものを詰めていた際は異常を感じなかったので、この間に、静かに冷蔵庫は斃れたらしかった。当然ながら、困る。冬ならばまだしも、目下、気温35度の世界である。大慌てで業者に電話をしたり、実家に冷蔵品を避難させてもらいにいく連絡を入れた。
この午後からは、ポルガと付き添いのファルマンは催し物に参加する予定があり、その間僕とピイガでプールに行く予定があった。そのためとりあえず冷蔵庫の、牛乳など、すぐに避難させなければならないものを抱え、実家へ行き、それを冷蔵庫に入れたあと、僕とピイガはプールへと向かった。ところがプールは超満員で、駐車場から車が溢れ、待つことさえ許されないという。島根県でもこんなことはあるのだ。仕方なく、涙をこぼして喚くピイガを、夕方にまた行くからと約束して宥め、しかし家でふたりで過すのもなかなか厳しいので、また実家に行くことにした。その際、さらに追加の冷蔵庫の物品と、本日の晩ごはんとして作るつもりだった餃子の材料も一緒に持ってゆく。プールが夕方にずれ込んだこともあり、このタイミングで実家で餃子を作ろうと算段したのである。すばらしい判断力。
というわけで実家で餃子を作った。なんだか自分の実家のような言い分だ。のびのび利用させてもらっている。包む段になって、ファルマンとポルガが催し物を終えて、こちらにやってきた。そんなわけで包む作業には、ファルマンと義母も参加してきた。ファルマンは普段ならば参加しないのだが(僕が僕以外の人間の包んだ餃子を好まないため)、キッチンを使わせてもらった手前、もちろん実家の面々の分もありまっせ的なことを僕が伝えたことで(追加の材料を途中で買っていた)、義母が「包むのくらいは手伝わなければ」というモードになったので、ファルマンも流れでやらざるを得なくなったのだった。別に本当にひとりでやってもよかったのだけど。
かくして90個の餃子を包み終え、いちど家に帰ることに。餃子は実家の冷蔵庫に入れておいて、プールのあとにまた取りに来ることにした。そうして戻ったら、なんか冷蔵庫が稼働していた。なんじゃそら、と思ったが、どうも稼働はしつつも、一方で不調を知らせるマークは点灯しているので、やはり予断は許さなそうで、予定通り業者には見てもらわなければならないし、実家に持っていったものはまだ引き上げられない。
そのあとすぐにプールへ。当初の予定が変更となったため、ポルガも参加することに。夕方になり、さすがに車が停められないということはなかった。しかしそれでも混んでいた。混み慣れしていない子どもたちはすっかりテンションを下げ、あまり愉しめなかった。まあ3連休のプールになんか行くもんじゃないな。今後、子どもたちは夏休みに入るわけで、平日の夜、気が向いたら子どもたちを誘ってやろうと思った。
そのあと実家に寄り、餃子を回収する。実家の面々は既に焼いて食べていた。「すごくおいしい」と言うので、「僕の作る餃子は世界一おいしいんですよ」と伝えておいた。
帰宅後、我々も餃子を焼いて晩ごはん。餃子は実家の冷蔵庫に入れておいて、持って帰って焼けばいいだけの話だが、問題はビールだ、と悩ましく思っていたが、なんとか息を吹き返した冷蔵庫がきちんと冷やしておいてくれて、熱々の、世界一おいしい餃子と、よく冷えたビールという至福を味わう。冷蔵庫のせいで慌ただしい1日だったが、最後にいい感じにまとまった。
3日目、最終日の今日は、ポルガは部活、さらにピイガに若干の風邪の症状が出たので、もとより家でのんびり過すつもりだったが、リビングで過すファルマンとピイガとは極力接触しないよう、ほぼ1日、部屋でひとりで過した。これほど優雅な休日があろうか。昨晩に放映された日曜劇場「VIVANT」の初回をTverで観ながら、裁縫や筋トレをする。「VIVANT」はなんかすごかった。やあすごかったなあ、と思いながらエンドロールを眺めていたら、撮影協力の所に島根県松江市とあったので少し驚いた。
裁縫はもちろんショーツである。ショーツ、よくもそんなに作るものがあるものだという話だが、やっていると、こんな作り方はどうかとか、細くしたらどうか、逆に太くしたらどうかとか、わりと次から次へと試行する事柄が出てきて、いつまでもどこまでも愉しい。これが趣味というものなのだな、と思う。
今日は本当にそんなことだけをした1日だった。なによりだ。
というわけで3連休は、暑さにやられつつも、それなりに愉しく、おいしく暮せた。もうすぐ子どもたちは、3連休など霞むような壮大なスケールの休みに突入する。うらやましい気もするし、無職の古傷を刺激したばかりの身には、ぜんぜんうらやましくなかったりもする。せいぜい健やかに生きようと思う。ピイガの風邪がうつりませんように。