要点を押さえたGW後半

 GWの後半が終わろうとしている。つまり今年のGWが終わろうとしている。寂寞である。
 初日の5月3日は、次女一家がこの前日の晩に移動して、既に実家に来ていたので、午前中から出向いた。春休み以来なので、1ヶ月ぶりでしかない。とは言え次女の第二子は、この間に1歳児から2歳児へという、年齢が2倍になるという大いなる躍進を遂げたのだった。すごいなあ、生まれたばかりの頃というのは。
 人が多かったので、昼ごはんの準備は買って出ることにした。材料はもちろん、ホットプレートまで持ち込んで、ソース焼きそばを作る。4玉を3回やった。
 食べたあとは、なぜだか出雲大社に行こうという話になって、僕の車と次女の夫の車の2台に分かれて出発した。地元民がGWに出雲大社に行くなんてものすごく馬鹿げた話だが、山陰では滅多にないような晴天だったので、出掛けないというのも阿呆らしく、出雲大社はともかく稲佐の浜を歩いたらさぞ気持ちがいいだろうと思った。なるべく混まない道から行こうと考え、大鳥居をくぐってご縁横丁を進む正面ルートではなく、裏側の稲佐の浜のほうから入るコースを選んだのだが、熟慮の果以むなしく、ひどく混んでいて、駐車場に入るまでだいぶ時間が掛かった。いざ駐車場に入る直前まで来たら、交差点の向こう側の、正面ルートから来る車はそこまででもないように見え、もしかしたら最近急に言われ始めた、「稲佐の浜の砂を持って出雲大社の砂と交換するのが正式な参拝法」という、これまで地元民は聞いたことのなかった言い伝えのせいで、今はむしろこっちの道のほうが混むのかもしれない、と思った。ちなみに道々の車は、全国津々浦々のナンバーで、島根や出雲はむしろ少数派だった。それはそうだ。散歩なのか参拝なのか、というような感じで境内を巡り、帰った。渋滞で時間と体力を喰ったこともあり、もう稲佐の浜はいいか、となった。僕的にはむしろそっちがメインだったのだけどな。
 実家に帰還後は、僕とファルマンだけがいったん自宅に戻り、夕方になってまた出発する。晩ごはんは鮨ということになり、ネットで注文したそれを店で受け取ったあと、実家へ再び赴いた。そして一同で食べた。1日、きちんと一族で過したな、県外に住む娘一家も帰省してきたのだし、GWに1日くらいこういう日はあるべきだな、というような日だった。
 翌日、5月4日は、次女一家は向こうの両親とともに泊りがけで広島にプロ野球を観に行く(これはこの一家の恒例行事のようだ)ということで、実家の面々とは絡まず、ゆるゆると過す。ポルガが午前中部活だったので、午後から道の駅キララ多伎へと出向き、昨日の稲佐の浜の雪辱で、海に足を浸したりして遊んだ。3月下旬に来た際は、春先の、まだ冷たい日本海であったが、今回は気候がよかったこともあり、裸足では砂浜が熱いほどだった。海開きはもちろん先で、まだシャワーも稼働していないのに、がっつり海に入って遊んでいる家族なんかもいて、こういう輩って毎年いるよな、と思った。気持ちは分かったけれど。
 晩ごはんは豆アジの唐揚げと、ミネストローネ。前晩の鮨しかり、自分が食事を担当する大型連休期間は、みそ汁が登場しないことが多く、気付けば野菜不足になっていたりするので、2日にわたって使えるような分量でミネストローネを作る。おいしかった。
 食後、せっかくGWだし、ということで久しぶりにトランプを持ち出し、大貧民をした。ちなみにだが、このGWを通し、わが家はとうとういちども誰もswitchを起動させなかったのだった。なんだかすっかりわが家のゲーム熱は下がったな。要するに、あまりゲーマー気質の人間たちではないのかもしれない。各自他にやりたいことがあるのなら、それに越したことはない。
 僕は合間の時間などはどう過していたかと言えば、そこまでバリバリやっていたわけではないが、今年も母の日にリクエストを受けたエプロンを作ったりなどしていた。プールは、会員が4月末で切れてしまい、なにも混んでいるであろうGWに行かなくてもなあという思いから、次の申し込みを先延ばしにしているため、行けていない。サウナもまた、いちどくらい行くかなとも思っていたのだが、結局行かなかった。
 それでは家でひたすら暇を持て余すGWだったかと言えば別にそんなこともなく、なんだかんだでちょこまかと動いた。3日目となる5日は、ポルガの部活もなかったので、午前中から松江へと繰り出した。目的は、ひとえに扱いの悪さによるものだろう、ポルガのスマホの不調を直してもらうためで、せっかく松江に行くのだからということで、なんかしらのイベントはやっていないものかと調べたのだが、意外とめぼしいものは見つからず、わりと純粋に、イオン松江にだけ行って帰った。スマホは店員さんが操作したら、わりとすぐによくなった。これはどうも、ちょっとした設定操作でなんとかなる、「わざわざ来なくてもよかった案件」のようだな、と感じたが、店員さんがやけに感じのいい人で、横溢する「わざわざ来なくてよかった案件」の香りを、ふわっと煙に巻くような感じの説明で、「そんなことなかったですよ案件」にしようとしてくれている様子だったので、こちらもそれに乗っかり、「来てよかった案件」として処理することにした。すばらしい大人たちの処世術だな、と思った。
 そのあと、せっかくだからということで、松江のブックオフに立ち寄る。初めて入った店。しかし近ごろブックオフって、本当に買いたいと思えるものがなく、そしてそれはブックオフではなく、100%僕のほうに原因があるので、かつて愉しめた場所が愉しめなくなったという種類の、いかにも中年的なアンニュイさに襲われるのだった。そしてこの精神の流れは、いつも入店してから思い出すのだ。入店する前は、過去のイメージから、いつもわりと意気揚々としている。ちなみに買わなかったけれど、二次元ドリーム文庫や美少女文庫が、110円の棚にずらーっと並んでいたので驚いた。この現象こそが、僕のブックオフとの距離を象徴しているな、と思った。かつてこれらのレーベルの文庫は、需要によるものだろう、よほど汚れているとかでない限り、滅多なことでは110円の棚には行かなかったのだ。400円とかしたのだ。それが今ではほとんどが110円になってしまった。そして在庫処分のように110円の棚に多く並ぶのは最後の輝きで、そのあとはもはやブックオフというフィールドからいなくなってゆくんだろう。哀しい。並んでいるものには、人生の途中で泣く泣く手離したようなものがわりとあって、ここでまた手元に置いておこうかな、ラストチャンスかもしれないな、などとも思ったのだが、娘たちに隠れてレジを通すのが、不可能ではないだろうが億劫だな、と考えてよした。自分も、ラノベ系文庫エロ小説も、すっかりフェーズが変わってしまったのだな、と切なくなった。娘たちは、漫画や児童書を何冊か買っていた。それでいい。それでいいんだ。
 帰宅した午後は、おやつに買って帰った柏餅を食べ、あとの時間は各自やりたいことをして過した。晩ごはんは、ミネストローネと、スーパーで買った味付きの焼くだけの豚肉だったのだけど、こちらがあまりおいしくなくて残念だった。
 夜は、この前の晩から2日がかりで、金曜ロードショーで放送した「すずめの戸締まり」をファルマンと観終えた。作品の世界観を理解してもらうための説明なんて、いつの間にかもう一切しなくていいことになったのか、と思った。そうだったのか。いつからだよ。
 かくして今日、6日がGWの最終日。ファルマンと子どもたちは午前、兵庫に戻る次女一家の見送りのため実家へ。広島みやげとして、もみじまんじゅうをもらって帰ってきた。僕はエプロンをとりあえず完成させた。今日はもうどこへも行かず、明日からの平日に向けて体制を整えようと思う。
 今年のGWは、遠出こそしなかったが、「渋滞」(出雲大社)、「親戚の集い」、「海遊び」、「高速道路移動」(松江)と、要点だけはやけに押さえた日々だった。というわけで、まあ悪くなかったんじゃないかと思う。ひどい疲労感とかもないし。さあ、ここから夏までは、わりとストイックな日々だな。次女一家もさすがに夏休みまでは現れまい。せいぜい気丈に暮そうと思う。