2月旗日

 やけに雪が降ることだよ。さいわい生活圏では、そこまでのドカ雪というわけではないのだけど、それでもなんだか2月は、降らない日より、雪が舞ったり積もったりしている日のほうが多かったような気がする。そのくらいには降った。降っている。2月って冬といいつつ実質春だよな、ということを前に書いて、それは2月を生きる僕のスローガンみたいなもので、大いに希望的観測が含まれているのだけど、しかしこのような過酷な寒さに晒されながらも、それでもやはり、冬って本当は1月でほとんど終わってんだよね、と思う。先日ファルマンが、「googleの表示してくれた2年前の同日のもの」といって、笠岡の菜の花畑に行っていた写真を見せてきて、山陽と山陰の違いをまざまざと思い知らされたのだけど、それでもやっぱり、日本海側にあっても、2月の、それも下旬ともなれば、もう冬なんてその残滓もなく完全に消え去っている。窓の外では雪が舞っているけれど、春にだって雪が降ることはある。これはそういう雪だと思う。こういうことをいっていると、ファルマンから、「そうやって油断をするから風邪を引くのだ」と断罪される。
 天皇誕生日で休みだった。週の真ん中での休みはよかったが(逆にリズムが崩れてじわじわ疲れるという説もあるが)、それでもかつての天皇誕生日の日取りの良さを知っている身、これまでの半生の大部である30余年ですっかり沁みついてしまっている身からすると、この日取りは弱いと思う。もっとも前までが強すぎた。12月23日って、祝日になるにあたって、最強の日取りだったのではないだろうか。年末の、クリスマス直前の、いろいろ忙しい、いろいろ整えたい、いろいろ準備したいタイミングで、ここに1日ぽっかりと休みがあることが、どれほど有用であったか。思い返すと、30余年の平成時代の思い出が一緒によみがえり、寂寥感に襲われる。
 目下コロナ禍の令和である。島根県の蔓延防止措置は解除されたが、雪交じりの天候も相俟って、やはりまだレジャーに繰り出す気概は湧かず、家でのんびりと過した。やはりこの冬、switchは買ってよかったと思う。子どもたちは日々、宿題や明日の準備や部屋の片づけをしたら、という条件をこなし、せっせと攻略に勤しみ、先日とうとうスーパーマリオは、無事に1周目のクリアを達成し、いまはスターコインの取りこぼしや、隠し面の出現など、やり込み要素に励んでいる。買ったソフトも正解だった。やっぱりマリオのものだな。
 晩ごはんは、ファルマンのリクエストにより春巻を作った。おいしかった。皮が10枚単位で売っていて、4人で10本というわけにはいかないから20だよな、と思って買ったのだけど、いざ巻いてみたら、春巻はイメージよりもサイズが大きく、なんなら10でもよかったかもな、と思いつつ、それでも僕とポルガは4本食べた(ファルマンとピイガは2本)。まあまあ油っこかったので、胃もたれが心配だったが、なんとか事なきを得た。まだ胃の働きは大丈夫なようだ。それにしてもおいしかった。餃子にしろ焼売にしろ春巻にしろ、どうもこういった包む系の調理に、僕はやけに適性があるらしい。異様に旨い。よそでこんなにおいしいのを食べたことがない。実家で母が作ったものを、おいしいと思って食べていたが、自分で作ってみたら自分のもののほうがさらにおいしかった。才能だな。

春先3連休

 嬉しい3連休。なにが嬉しいって、済まさなければならない用件はもちろんのこと、レジャーの予定もなく、レジャーは、公園系は寒くて行けるはずがないし、蔓延防止等重点措置が発令されているため屋内施設も営業をしていなかったり、していたとしてもやっぱりこのタイミングで行かなくてもいいよな、と思ったりで詰んでおり、つまり「特になにもすることがない3連休」だったのだ。それのなんと贅沢なことか。
 初日の午前中は買い物に出た。食糧品を中心にいろいろ仕入れたあと、昼ごはんとしてマクドナルドを買って帰った。マックはいまハッピーセットがムーミンで、ぼやぼやしているうちに気づけば第2弾になってしまっていたのだが、それを大人も含めて4つ(本気でほしいおもちゃのときだけ、大人もハッピーセットを注文するのが発動する)、買って帰った。買って帰ったと簡単に言ったが、3連休初日の祝日、そして第2弾の初日、さらには正午過ぎという時刻もあり、買うまではなかなか苦労した。待ちながら、「島根でこんなに盛況しているのだから、東京ではとんでもないことになっているんじゃないか」なんてことを夫婦で話していたら(しかしよく考えたら東京は店舗数が多いから逆にこんなことにはならない気もする)、ポルガが「行列が伸びて山をふたつくらい越えるかもしれないね」と言ってきたので爆笑した。ジョークじゃない。マジである。実は練馬生まれのくせに、長年の田舎暮らしによって、とうとうそんな世界観になってしまった。リアル「俺ら東京さ行ぐだ」状態。将来は銀座に山を買うのかもしれない。ハッピーセットは、3種類がひとつずつと、ムーミンママの砂時計が被った。3種の中ではムーミンママの砂時計がいちばん当たりだと思うので、大成功だった。
 午後は縫製をしたり、筋トレをしたりという、いつもの過し方。おやつのあと、僕とファルマンでswitchをやった。子どもたちは、1日に許されたゲーム時間を、休日はいつも朝に使ってしまうため、見るだけ。わが家唯一のソフトである2次元のスーパーマリオは、ファミコンの「スーパーマリオブラザーズ3」の経験値が通用するため、子どもたちから「パパは上手」という認定をされており、気分がいい。ずっとこういう、親世代が最新技術についていけない、みたいにならないゲームだけしていたい。
 晩ごはんは肉たっぷりのつけ汁で食べるざるうどんと、厚焼き玉子とアボカドのタラマヨサラダ。後者は、1週間前に手巻きずしをした際、厚焼き玉子とタラマヨで巻いたものが、刺身よりもむしろおいしく、感動したため、じゃあもういっそその中身みたいなサラダ(サラダというか和え物?)を作ってしまえばいいんじゃないか、と思って作った。結果、まあまあおいしかったが、でもここに、海苔と、酢飯と、わさび醤油が加わったらもっとおいしいんだろうな、とも思った。こういう、組み合わさった物の中心部が好きで、その中心部だけがたくさん集合したものがあれば夢のようだと思い、しかし実際に手に入れてみたら、案外そこまで愉しめなくて、周りがあるからこそ高いレベルで成立するんだな、と思うことって、いま具体的な例はひとつも思い浮かばないけれど、人生の中で多々ある。
 翌日は、天気が良かったので、朝からひとり、ジョギングに出た。実は10日ほど前から、2、3日おきのペースでジョギングを始めた。プールの代替としての有酸素運動である。いつもは夕食後、食休みをしてから夜に走っているのだけど(8時台なのに人とまったくすれ違わない)、休日だから朝だ。朝陽の下、ジョギング。帰宅後のシャワーを含め、とても気持ちがよかった。人とまったくすれ違わなかった。山をふたつくらい越えた先にしか人はいないのかもしれない。
 この日は、この特にしなければならないことのない3連休の中で唯一と言ってもいい、やったほうがいいこと、やってしまいたいことの、知人のためのズボン作りをした。依頼を受けて3週間あまり、当初思っていたよりもかなり難儀し、あぐねていたのだけど、ようやく作り上げる見当がついたので、このまとまった休日のうちに仕上げてしまいたかった。結果、無事に完成することができた。なぜズボン作りでそんなにあぐねたのか、その模様は後日「nw」に記録しようと思う。
 昼ごはんは、納豆と卵の混ぜそば。大人はネギを、これでもかとたっぷりかけ、つるつるさっぱり、おいしく食べた。僕が料理を担当する週末は、やけにごはんを炊かない。
 午後、あまりにも天気が良くて、もったくなく感じ、しかし公園は、子どもは遊ぶので体があったまるだろうが、待機する大人はひたすら寒いのでやはり行くわけにはいかず、考えた末に海を見に行くことにした。砂浜には、同じような選択肢の中、同じような思考をしたらしき人たちが、そこそこいた。海は、1月のそれとは明らかに変わっていて、どこからどう見ても「春の海」だった。やっぱり2月は、冬だけど冬じゃなく、言わば「冬(春)」みたいな冬だな、ということを思った。子どもたちは砂でめいめいに遊び、大人はそれを眺めたり、写真に撮ったり、海を見てたそがれたり、思い思いに過ごした。来ている人たちの中には、海に足を浸している剛の者もいたが、それをする気にはならなかった。7月になったら泳ぎにこようと思った。
 晩ごはんはハンバーグ。さすがにごはんを炊いた。付け合せで、先日スーパーで買った、いかにも春先らしい、ピンポン玉よりもひと回りからふた回り小さいような、メークインを、もちろん皮のまま、丸ごと揚げた。これがとてもおいしかった。こうしてみると、とても春を感じ取った1日だったようだ。
 最終日の今日は、この3週間わりと頭を重くしていたズボンの件が落着した解放感から、ひたすらしたいことをして過した。天候は昨日から一転、山陰の冬らしい「降るともなく降り続ける雨模様」のやつで、これからはこういうせめぎ合いが延々と続くのだろう。
 昼ごはんは、昨日のハンバーグの残りで作ったハンバーガーと、午前中に作ったトマトソースをたっぷり塗ったピザトーストという、目新しい感じのメニュー。あと昨晩のそれがとてもおいしかったので、またひと口メークインを揚げた。そう考えると、初日のマック、2日目のハンバーグの付け合せ、そしてこれと、3日連続でフライドポテトを食べたのだな。だからなに、ということはないけれど。
 午後は、ファルマンと子どもたちが午前中に焼いたチョコのカップケーキを持って、実家へ。1日早いバレンタインデーである。向こうからも、ムーミンのかわいい缶箱に入ったチョコレートをもらう。缶箱が嬉しい。中身を食べきったら、こまごましたものを入れる箱にしようと思う。おやつとして、持ってきたカップケーキを一同で食べる。予想通りの、見た目通りの味。なにぶん、僕の母にいつぞや教えられたレシピで作ったものなので、本当によく知った味なのだった。実に淡々と済まされたバレンタインデーであった。
 晩ごはんは、ぶり大根とスパゲティサラダ。最近、寒さもあってビールやチューハイを飲まない代わりに、日本酒の酒量が増えていて、あまりよろしくないなあと思うのだが、ぶり大根はあまりにも日本酒向きの味で、夕飯時は飲まずに済ませたのだけど、たぶんこのあと、録画した「鎌倉殿の13人」をファルマンと観ながら、どうしたって残りのぶり大根と熱燗、ということになる。もうこれはしょうがない。人生の快楽だからしょうがない。
 というわけで3連休は、斯様にとてものんびり、いい具合に過した。観ている「THIS IS US」のシーズン5の中で、「忘れたくないのは、子どもたちが子どもだった頃の、なんでもない土曜日の記憶」みたいな台詞があって、それは本当にそうだろうな、としみじみと思ったのだった。子どもと一緒に過ごす休日は、毎日終盤になると、主にピイガのうるささなどに辟易し、うんざりしてしまうのだけど、今がとても貴重な時間だということは、その乍中にありながら、理解している。理解はしているが、やはり夜にはもうたくさん、となる。このあたりの心情と、記事序盤の厚焼き玉子とタラマヨの話は、かすかに繋がる気もする。

平日のような平日じゃないような1月末日

 変則的に、土曜日が出勤で、月曜日が休みだった。久しぶりの平日休みに心が浮足立ち、そうなるとやっぱり四季荘かなあ、と思った。常連向けの、内輪ウケのイベント情報ばかりがラインに届いて白ける、ということを前に書いたが、やっぱり稀有な平日の休みを満喫しようと思うと、パッと四季荘が思い浮かぶのだった。しかし結果的に、今回は行かなかった。したいことが多くあったのと、あとはなにより億劫さが勝った。こういう外出に関し、億劫さを勝たせてばかりいるとあまりよくない気もするので、そのうち帳尻を合わせようと思う。やはり、春が来ないことにはな。
 月曜日は1月31日ということで、今月いっぱいという期間で、オミクロン株による感染拡大を理由に休校となっていた娘たちも、その最終日として家にいた。そうなのだ。せっかくの平日休みといいつつ、子どもが家におったのである。それもまた、いくらかはサウナに繰り出す意欲を削いだかもしれない。もっともサウナに行くつもりだった午前、家にいて子どもの世話を買って出たわけでもない。「休校中は自宅で、登校したかのように、なるべく時間割に沿って学習をしてください」という、おととしから続く、両親ともが外に働きに出る家庭を憤死させる学校からの要請を、この期間ファルマンは持ち前のアレ(アレとしかいいようがないアレである)によってかなり忠実に遵守しており、この日も午前中いっぱいは子どもを机に向かわせていた。
 なので僕は心置きなく、部屋でしたいことをした。主に縫製だ。土曜の夜から月曜日まで、そこまで没頭したわけでもないが、それなりにいろいろ縫った。それはそのうち「nw」などに投稿しようと思う。
 午後は家族でNintendo switchをして遊んだ。さらっと書いたが、実は数日前に、とうとう買ったのだった。これをいちばん喜んだのは、前から欲しがっていたポルガであり、そのポルガも、「どうして?」と不思議で仕方ない様子だったが、どうしてこのタイミングで買ったかといえば、まあ休校で時間を持て余し気味というのももちろんありつつ、なんといっても岸田のおじさんからのお金に拠るところが大きい。配る前、現金だ商品券だとなんやかんや論議され、「じゃあ自治体の判断で全額現金でもいいよ」と国が折れる形になり、しかしそのあと、「子育て関連にのみ使える商品券」という謎のその券の、そもそも実体を見たことがない、もちろん我が自治体でも、年末5万(×2)、年始5万(×2)と現金で振り込まれた、例のお金である。これに関しては、前回の一律給付金とは意味合いが違うのか、「貯め込まずに消費して社会を動かせよ」みたいなことは、そこまで世間でいわれていないが、しかしまあ、望外の収入であり、望外の収入は、望外の収入でもない限りなかなか買う気にならないものを買うべきだろうという心理から、クリスマスプレゼントの電子辞書であったり、ミシンであったり、そして今回のswitchであったりを、購入したわけである。偉い。ちゃんと消費して、偉い。すごく偉いから、もう6回くらいくれないだろうかと思う。switchは、とりあえず最初のソフトとして、「スーパーマリオブラザーズ U デラックス」を買った。2次元の、とてもオーソドックスなスーパーマリオ。数日の吟味の末、結局これだろう、と選んだ。結果として、やっぱり正解だったろうと思う。ピイガの操作するキャラクターが、ピイガの動きそっくりに、無駄に動き、穴に落ちて、すぐにゲームオーバーになるので、みんなで大笑いしながら愉しんでいる。
 夕方になり、雨上がりだったため空気が澄んで、山がとてもきれいだったので、子どもを連れて散歩に出る。散歩というか、子どもたちは自転車で、僕はトレーニングウェアに着替えてジョギング。気持ちがよく、体は熱くなったが、こういうとき体が熱くなっても指先なんかは冷たいままなのだと知った。指が、かじかむのレベルを超えて、あまり動かないくらいまでに凍りついた。そういえばジョギングの人たちは手袋をしているよな、と家に帰ってから思った。
 晩ごはんは餃子。最近カステラを作るので(実はこの日も焼いた)、家に強力粉があり、久しぶりに皮を手作りしようかなー、とも思ったのだが、買い物で大判の皮を見つけ、それが本当に僕好みの、大きくて分厚い皮だったので、これでいいやとなった。包んで焼いたところ、ひとつを食べるのに3口くらいを要するような、理想的な大きさに仕上がり、満ち足りた気持ちになった。