嬉しい3連休。なにが嬉しいって、済まさなければならない用件はもちろんのこと、レジャーの予定もなく、レジャーは、公園系は寒くて行けるはずがないし、蔓延防止等重点措置が発令されているため屋内施設も営業をしていなかったり、していたとしてもやっぱりこのタイミングで行かなくてもいいよな、と思ったりで詰んでおり、つまり「特になにもすることがない3連休」だったのだ。それのなんと贅沢なことか。
初日の午前中は買い物に出た。食糧品を中心にいろいろ仕入れたあと、昼ごはんとしてマクドナルドを買って帰った。マックはいまハッピーセットがムーミンで、ぼやぼやしているうちに気づけば第2弾になってしまっていたのだが、それを大人も含めて4つ(本気でほしいおもちゃのときだけ、大人もハッピーセットを注文するのが発動する)、買って帰った。買って帰ったと簡単に言ったが、3連休初日の祝日、そして第2弾の初日、さらには正午過ぎという時刻もあり、買うまではなかなか苦労した。待ちながら、「島根でこんなに盛況しているのだから、東京ではとんでもないことになっているんじゃないか」なんてことを夫婦で話していたら(しかしよく考えたら東京は店舗数が多いから逆にこんなことにはならない気もする)、ポルガが「行列が伸びて山をふたつくらい越えるかもしれないね」と言ってきたので爆笑した。ジョークじゃない。マジである。実は練馬生まれのくせに、長年の田舎暮らしによって、とうとうそんな世界観になってしまった。リアル「俺ら東京さ行ぐだ」状態。将来は銀座に山を買うのかもしれない。ハッピーセットは、3種類がひとつずつと、ムーミンママの砂時計が被った。3種の中ではムーミンママの砂時計がいちばん当たりだと思うので、大成功だった。
午後は縫製をしたり、筋トレをしたりという、いつもの過し方。おやつのあと、僕とファルマンでswitchをやった。子どもたちは、1日に許されたゲーム時間を、休日はいつも朝に使ってしまうため、見るだけ。わが家唯一のソフトである2次元のスーパーマリオは、ファミコンの「スーパーマリオブラザーズ3」の経験値が通用するため、子どもたちから「パパは上手」という認定をされており、気分がいい。ずっとこういう、親世代が最新技術についていけない、みたいにならないゲームだけしていたい。
晩ごはんは肉たっぷりのつけ汁で食べるざるうどんと、厚焼き玉子とアボカドのタラマヨサラダ。後者は、1週間前に手巻きずしをした際、厚焼き玉子とタラマヨで巻いたものが、刺身よりもむしろおいしく、感動したため、じゃあもういっそその中身みたいなサラダ(サラダというか和え物?)を作ってしまえばいいんじゃないか、と思って作った。結果、まあまあおいしかったが、でもここに、海苔と、酢飯と、わさび醤油が加わったらもっとおいしいんだろうな、とも思った。こういう、組み合わさった物の中心部が好きで、その中心部だけがたくさん集合したものがあれば夢のようだと思い、しかし実際に手に入れてみたら、案外そこまで愉しめなくて、周りがあるからこそ高いレベルで成立するんだな、と思うことって、いま具体的な例はひとつも思い浮かばないけれど、人生の中で多々ある。
翌日は、天気が良かったので、朝からひとり、ジョギングに出た。実は10日ほど前から、2、3日おきのペースでジョギングを始めた。プールの代替としての有酸素運動である。いつもは夕食後、食休みをしてから夜に走っているのだけど(8時台なのに人とまったくすれ違わない)、休日だから朝だ。朝陽の下、ジョギング。帰宅後のシャワーを含め、とても気持ちがよかった。人とまったくすれ違わなかった。山をふたつくらい越えた先にしか人はいないのかもしれない。
この日は、この特にしなければならないことのない3連休の中で唯一と言ってもいい、やったほうがいいこと、やってしまいたいことの、知人のためのズボン作りをした。依頼を受けて3週間あまり、当初思っていたよりもかなり難儀し、あぐねていたのだけど、ようやく作り上げる見当がついたので、このまとまった休日のうちに仕上げてしまいたかった。結果、無事に完成することができた。なぜズボン作りでそんなにあぐねたのか、その模様は後日「nw」に記録しようと思う。
昼ごはんは、納豆と卵の混ぜそば。大人はネギを、これでもかとたっぷりかけ、つるつるさっぱり、おいしく食べた。僕が料理を担当する週末は、やけにごはんを炊かない。
午後、あまりにも天気が良くて、もったくなく感じ、しかし公園は、子どもは遊ぶので体があったまるだろうが、待機する大人はひたすら寒いのでやはり行くわけにはいかず、考えた末に海を見に行くことにした。砂浜には、同じような選択肢の中、同じような思考をしたらしき人たちが、そこそこいた。海は、1月のそれとは明らかに変わっていて、どこからどう見ても「春の海」だった。やっぱり2月は、冬だけど冬じゃなく、言わば「冬(春)」みたいな冬だな、ということを思った。子どもたちは砂でめいめいに遊び、大人はそれを眺めたり、写真に撮ったり、海を見てたそがれたり、思い思いに過ごした。来ている人たちの中には、海に足を浸している剛の者もいたが、それをする気にはならなかった。7月になったら泳ぎにこようと思った。
晩ごはんはハンバーグ。さすがにごはんを炊いた。付け合せで、先日スーパーで買った、いかにも春先らしい、ピンポン玉よりもひと回りからふた回り小さいような、メークインを、もちろん皮のまま、丸ごと揚げた。これがとてもおいしかった。こうしてみると、とても春を感じ取った1日だったようだ。
最終日の今日は、この3週間わりと頭を重くしていたズボンの件が落着した解放感から、ひたすらしたいことをして過した。天候は昨日から一転、山陰の冬らしい「降るともなく降り続ける雨模様」のやつで、これからはこういうせめぎ合いが延々と続くのだろう。
昼ごはんは、昨日のハンバーグの残りで作ったハンバーガーと、午前中に作ったトマトソースをたっぷり塗ったピザトーストという、目新しい感じのメニュー。あと昨晩のそれがとてもおいしかったので、またひと口メークインを揚げた。そう考えると、初日のマック、2日目のハンバーグの付け合せ、そしてこれと、3日連続でフライドポテトを食べたのだな。だからなに、ということはないけれど。
午後は、ファルマンと子どもたちが午前中に焼いたチョコのカップケーキを持って、実家へ。1日早いバレンタインデーである。向こうからも、ムーミンのかわいい缶箱に入ったチョコレートをもらう。缶箱が嬉しい。中身を食べきったら、こまごましたものを入れる箱にしようと思う。おやつとして、持ってきたカップケーキを一同で食べる。予想通りの、見た目通りの味。なにぶん、僕の母にいつぞや教えられたレシピで作ったものなので、本当によく知った味なのだった。実に淡々と済まされたバレンタインデーであった。
晩ごはんは、ぶり大根とスパゲティサラダ。最近、寒さもあってビールやチューハイを飲まない代わりに、日本酒の酒量が増えていて、あまりよろしくないなあと思うのだが、ぶり大根はあまりにも日本酒向きの味で、夕飯時は飲まずに済ませたのだけど、たぶんこのあと、録画した「鎌倉殿の13人」をファルマンと観ながら、どうしたって残りのぶり大根と熱燗、ということになる。もうこれはしょうがない。人生の快楽だからしょうがない。
というわけで3連休は、斯様にとてものんびり、いい具合に過した。観ている「THIS IS US」のシーズン5の中で、「忘れたくないのは、子どもたちが子どもだった頃の、なんでもない土曜日の記憶」みたいな台詞があって、それは本当にそうだろうな、としみじみと思ったのだった。子どもと一緒に過ごす休日は、毎日終盤になると、主にピイガのうるささなどに辟易し、うんざりしてしまうのだけど、今がとても貴重な時間だということは、その乍中にありながら、理解している。理解はしているが、やはり夜にはもうたくさん、となる。このあたりの心情と、記事序盤の厚焼き玉子とタラマヨの話は、かすかに繋がる気もする。