広島旅行2022浅春 ~日本シリーズとたけしと開幕と三谷幸喜~

 広島市街は都会だった。さすがは中国地方最大だと思った。ビル街のような風景を、とても久しぶりに見た気がした。島根でいちばん栄えているのはどうしたって松江ということになるが、松江にビル街はない。おらの県にはビル街がないのだ。そして中心部のビル街から少し抜けると、島根ではとても見かけないような大規模のマンション群もあり、人口の多さ、すなわち力強さを痛感した。横浜市の中学生時代、広島に来てもそんなことはまるで感じなかった。ビルに気圧されたりなんて全然しなかった。それはそうだろう。逆に、20代前半に初めて島根に来たとき、その田舎っぷりに大きなショックを受けたものだ。隔世の感があるな。
 ホテルはドーミーインの、去年の11月にできたという、新しいほう。泊まる場所は、前回の鳥取もだったが、「サウナイキタイ」から探すスタイルで、オーシャンのような愉しそうな場所はなかったけれど、ドーミーインならまず間違いなかった。なんてったってコスパだ。おとなひとりの宿泊料が安い上に、子どもの添い寝は無料とのことで、とても安く上がった。半月前でこのプランが取れたのは、この週末に広島でカープの試合がなかったことも関係しているんだろうと思う。建物も部屋も新しくきれいで、とてもよかった。
 晩ごはんを食べる前に、お風呂を済ませることにする。お風呂は14階にある。14階のお風呂で、露天もあるというので、どんな光景だろうと期待していたが、大都会広島には14階よりも高い建物がたくさんあるため、そこまで開放的な作りであるはずもなかった。オーシャンの、2階のテラスから無人の海に向かって外気浴、というほうが異常なのだ。18時になったばかりくらいの大浴場は人が少なく、快適だった。女風呂のファルマンたちに至っては貸し切りだったそうで、なにぶん子どもたちはちょこまかと動いていつもハラハラさせられるので、他者に気兼ねしなくてよかったのはとてもよかったという。オーシャンでは、入浴後ファルマンは不機嫌になっていたため、それがなかったのはありがたかった。サウナにも少しだけ入り、コンパクトに1セットこなしたが、空腹もあり、家族との兼ね合いもあり、本格的に入るのはまた夜にすることとして、素早く上がる。打ち合わせをしたわけではなかったが、ちょうど同じようなタイミングで出てきたので、みんなでサービスのアイスをもらって部屋に戻った。
 部屋で夕飯のスシローを食べる。一応ビジネスホテルなので大きいテーブルがあるわけではなく、少々食べづらかったが、鮨なのでなんとかなった。おいしかった。冷蔵庫で冷やしておいたアサヒのジョッキ生が、涙が出るほどにおいしかった。お風呂に入って、鮨を喰って、ビールを飲んで、家族がいて、すぐ横にはベッドがあって、くっつけたふたつのベッドで今晩は旅先で4人で寝るのだと思うと、寝不足と疲労によってすぐに襲ってきた酩酊感と眠気もあり、ふわふわと夢心地のような幸福感があった。
 鮨だけでだいぶお腹がいっぱいになったが、ドーミーインと言えば夜鳴きそばということで、時間になるのを待って、食べにいく。もちろん人数分はもらわない。そんなに喰えない。だけどおいしかった。話には聞いていたが、ドーミーインは本当に至れり尽くせりだな、と思った。
 それから子どもたちは就寝するので、僕はひとりで大浴場に向かった。ここで本格的にサウナを堪能するつもりだったが、いかんせん満腹感やら疲労感やら眠気やらで、もたなかった。行くだけ行ったが、今回もさっきと同じくらいの小上がりで終えた。人は、夕方よりは多少増えていたが、それでもそんなに多くなかった。オーシャンは大賑わいだったな、とあの日のことを思い出した。あの晩は、日本シリーズ、ヤクルト対オリックスの初戦で、狭くないサウナに、詰めるように大勢で入り、試合を眺めたのだった。懐かしい。愉しかった。あれからちょうど1週間後の土曜日に、ヤクルトが4勝目を挙げ、シリーズは終了した。そしてその試合が長引いたことで、「ニュース7Days」の放送開始が大幅に遅れ、それがきっかけとなってビートたけしが体力の減退を理由に番組を降りることとなり、そして今年のペナントレースが始まって1週間後のこの日の夜が、たけしに代わって三谷幸喜が新キャスターとなった新体制の放送初日なのだった。そのあたりのことが妙に印象深かったので、こうしてここに書き残しておいた。三谷幸喜は、思っていたよりも当たり障りなくやっていた。生のニュース番組でボケたりジョークを言ったりするのは難しいだろうな。
 風呂から出て、部屋に戻ったあとは、すぐに寝た。日付が変わればファルマンの誕生日だが、そこまで起きていられるはずもなかった。子どもたちもわりとすぐに寝た。シングルサイズのベッドふたつだが、合体させたら4人で寝てもそう狭く感じなかった。全体的に、細目で小さ目な4人なのだ。深く寝た。
 つづく。