そぞろ雑談

 暖かくなってきて、過ごしやすい。暑くも寒くもない、いい季節だ。そのため眠りの質がいい。春眠暁を覚えず、なんてどこ吹く風、やけに短い睡眠時間で済んでいる。休みの日はのんびり8時間とか9時間とか寝ちゃうぞ、なんて思っていても、6時間ほどで目が覚め、それから粘って微睡んでもせいぜい1時間弱ほどしかベッドにいられない。まあ悪いことではないだろうと思う。長く寝られるとそれはそれで、「それだけ体力があるってことだ、年を取るとそんなに寝られない」という褒め言葉があったりするので、どういう状態が最良なのかはよく判らない。短くても長くても睡眠は良いのだとすれば、最適解を常に希求するのが是とされるこの情報化社会において、睡眠というジャンルはやけに判定が優しい。あっさりでもねっとりでもこちらの思いのままで文句を言わないだなんて、都合のいい女のようだ。
 思いのままといえば、当世の思いのままにならなさは相変わらずすさまじい。もうウェブでも現実でも、口を開けば新型コロナの話題ばかりで本当にうんざりするが、「コロナ対策で家に居ろ」といわれているのだから、暮しや思考がコロナ色に染まるのも仕方がない。
 もうすぐGWだが、もちろん帰省の予定はない。今年は休みの配列が悪くてそんなに長くないので、もともとここで帰るつもりはなかった。しかしGWに帰省しないと夏に帰省することになるわけで、今年のお盆というのはオリンピックとパラリンピックの間ということになるのか? それって街はどんな感じなんだ? などとぼんやりと考えていた。1月時点では。そこからいろいろすっかり変わった。なんだか隔世の感がある。この分だと夏もどうなんだろうな。しかし夏に行かないと、じゃあまたウイルスが活発になる冬に移動するの? という話にもなってくる。まったくうざったいな。
 GWはじゃあ家でなにをするかといえば、ちょっと本腰を入れて取り組もうとしていることがあり、そのための資料を数日前に図書館に借りにいったのだが、もうありとあらゆる図書館は新型コロナ対策として休館しているのだった。油断していた。図書館は、家で過すための本を借りる場所だから、休まないと思っていた。抜かったな。すっかり予定が狂ってしまった。
 「STAY HOME」で友達と遊べないことについての渇望というのはもちろんなくて、そんなこといったら俺なんてもう何年も前から「STAY HOME」どころか「STAY MYSELF」で、自分自身の精神的外骨格の中でのみ躍動して暮していたからぜんぜんへっちゃらで、むしろこの期に及んでまだ他人となんとかして絡もうとする人々の精神病理を「繋がらなろうね症候群」と名付け糾弾しているほどなのだけど、しかしプールとサウナとカラオケに行けない鬱憤はだんだん溜まってきた。プールとサウナとカラオケに行く人だ、というとなんだかまるでアクティブな人格のようである。おかしいな。
 家族は相変わらずにぎやかに過している。今回のことでしみじみと、ファルマンが家にいるのはいいことだと思うようになった。政府はこれまで熱心に共働きを推奨していたけれど、果たして今後も言い続けるのだろうか。一体どの口で言うのか。そして子どもたちにとって今回の出来事はどのような印象として残るのだろう。きっと、それがいいことなのかどうなのかは分からないが、学校を休むことに対するハードルは、これまでの時代よりもはるかに低いものになるだろうと思う。その感覚は普通、大学生になってから獲得するものだが、それをもうこの時点で手に入れてしまったのではないかと思う。