緊急事態宣言解除の海へ

 週末、天気がよかったので砂浜に遊びに行く。はじめはどこかしらの公園に行くつもりだったのだが、ファルマンのタブレットの下世話な機能で、「約1年前にあなたはこんな場所に行きましたよ」と砂浜の写真が提示され、それを目にしたら、たぶん1年前の自分たちとまったく同じ熱情で、この時期のこの気候は砂浜だよ、という気分になったのだった。行ったところ砂浜は、ほぼ間違いなく、去年よりも人出が多かった。やはりそれは、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、さすがにショッピングモールとかはちょっと……、と自重する層が多いからだろうか。もっとも人出が多いとはいえ、湘南などの情景を想像してはいけない。砂浜で遊ぶ娘たちを、他の人が映り込まないように撮るのに苦労はぜんぜんしないという、その程度の人出である。
 陽射しが強く、砂は裸足で歩くとだいぶ熱かったが、海水に足を浸すと水温はまだまだ冷たかった。しかしがっつり海水浴っぽいことをしている豪のファミリーもいた。いちど入ってしまえば大丈夫になるのかもしれないが、それまでに高いハードルがあるし、それに浸かってしまったらもう二度と地上に戻れない気もした。ひとしきり波打ち際で遊んだあと、テントの中で昼ごはんを食べた。今年もなんとかこういう季節にたどり着いたのだな、と例年よりも格段に感慨深く味わった。
 緊急事態宣言の解除によって緩みが見受けられる、などと為政者はいうけれど、緊急事態宣言の解除で緩んではいけないのなら、我々はいったい何によって締め付けられていたのだろう。それこそ、ウイルスよりも怖い人の目、というやつで、緊急事態宣言が解除されても、自粛警察の気が済むまでは緩んだ素振りを見せてはいけない、みたいな話になってくる。今回のコロナ禍は、9年前の放射能禍と、違う部分もあるが同じ部分もあって、「いちばん怖がる人がいちばん偉い」的な空気はまったく一緒だと思う。正常性バイアス族はとことんバカにされ、最後まで警告を発し続ける人が最も賢いみたいな、そんな雰囲気がある。でもそれって悪いことばかりいう占い師みたいなもので、「このままだとマズいよ」といわれて、本当に悪いことが起ったら「それ見たことか」となるし、もしも悪いことが起らなかったら「私の占いを聞いて気をつけた結果だね」となるので、絶対に外れないがゆえに最強という、そういう感じがある。つまり、ひたすら最悪のシナリオをいい続ける人というのは、そんな卑怯なスタンスに身を置いていると思う。正常性バイアス族の出歩きを断罪するのなら、同じ振り幅の反対側の、そっちの人のこともちゃんと断罪してほしい。断罪してほしいが、彼らにはいつまでも「それ見たことか」と言う、という望みがなくならないので、難しいだろうな(放射能のなにかの元素の半減期は30年後とかだっけ)。それに対して韓国がそうであったように、収束したかな、と思いきやクラブでクラスター発生、みたいな、正常性バイアス族の不利になる案件は、いくらでも起り得る。だからこの対決は勝てるはずがない。でも悲観論者が勝つことで、いったいどういう救いがあるというのだろう。じゃあ全員で世を儚んで死ぬかよ。
 帰宅後、まだ3時前だったが、全員シャワーを浴びた。正規の入浴時間にはだいぶ早かったが、汗をかき、海風を浴びたので、もういっそ着替えの意味も含めて浴びちまおう、となった。これがとてもよかった。日中の入浴は気持ちがいい。
 日中の入浴は気持ちがいい、で想起されるのは、スーパー銭湯やサウナ、および入浴ではないがプールのことなどだ。これらの施設もさすがにそろそろ再開してくるはずで、それがとても嬉しい。ジムには正直まだあまり行く気にはならないが、風呂やプールはいいだろうと思う。自分の中でそういう線引きがある。コロナの落ち着きとプールシーズンが噛み合ってよかった。夏には(いったん)収束する、というのは以前からいわれてたけど、公共のプールはもしものことを考えて前のめりで休業したがるだろう、ということを危惧していて、もうちょっと不穏な時期が長続きしたら今夏は完全にクローズ、ということになりかねなかったと思う。そうはならなそうだ。よかった。

こもりGW

 GWの最終日である。先週の土曜日から始まったこのGWは、お利口に、ほぼほぼ自宅で過した。一家で4人でずっといると、子どものうるささに耐えきれなくなるような局面も何度かあり、こんなとき通常なら絶対にプールか浴場に逃げていただろうなあ、と思うと、ああ今は非常事態なのだなあ、ということをしみじみと感じた。昨日はとてもいい陽気だったので人口密度の低い公園に遊びにいったのだが、本来ならそこはたぶんプールだったろうと思う。通年営業ではない、半屋外みたいなあのプールは、5月から営業を開始するのだよなあ、などと思って切なくなった。去年のGWは、改元にあたっての10連休と銘打って盛り上がるはずだったのが、天候が全体的に悪くてショボショボした気持ちになったが、今年は天気も大崩れすることなく、わりと5月らしい過しやすい気候だった。でもそれは、どうせたぶんそんなことになるんだろうな、と事前に予想していたのでショックじゃなかった。もうええねん。祝福ムードの10連休は天気が悪いねん。外出自粛のGWは概ねお出かけ日和やねん。わかっとんねん。
 それで長い時間おうちにいてどんなことをしていたかというと、ひとつ前の記事で、図書館が閉鎖されていた話題のときにもにおわせたように、新しく始めようとしていることの準備をしていた。新しく始めようとしていることとはなにかといえば、秘匿したところで仕方ない(そもそもこのブログそのものが秘匿されているようなものだし)ので明かすけれども、ハンドメイド作品の販売である。カッティングマシンを手に入れたことで、ようやく念願の、布に自分の思ったものをデザインする、ということができるようになったので、いよいよちゃんと販売してみようと決意したのだった。というわけでその作品を作ったり、販売サイトへの登録をしたり、作品以外の細々したもの(お礼状や梱包材など)の準備をしたり、なんやかんや作業をしていた。それで、とりあえずの商品は出来上ったものの、備品や写真撮影などがままならないため、開店はもう少し先になりそうだ。ともかく愉しかったし、これからの展開も愉しければいいなあ、と思っている(売れたい)。