プールと節分

 この2週間、月の巡りや体調不良によって先延ばしになっていた温水プールへ、ようやく行くことができた。商売っ気のない所で、これまでその存在に気づかず、まったく利用してこなかったが、実は便利な場所にあるので、いい所ならいいなと期待していた。そうしたらかなりよかった。基本的にレジャーではなくトレーニング用なのだが、いちおう幼児向けプールなんかも併設されていて(土曜日なのに貸し切り!)、家族で愉しめた。ポルガはいちおう僕と一緒に25メートルプールに入り、ビート板を使ってそれなりに泳いでいた。あまりにも成長が遅すぎ、業を煮やして辞めてしまったスイミングだが、まあ曲がりなりにも1年余り通ったことで、まったくの手つかずではない状態くらいにまでは至ったようだ(1年かけてそこかよ、という感じはあるけれど)。僕は25メートルを、何度か往復した。最初の1回目で背中がピキッとなって、これはまずいのではないかと危ぶんだが、そこから回数を重ねれば重ねるほど、逆に体が楽になった。泳ぐのって気持ちいいし愉しいし、しかもこれでいい運動になるというのだからいいこと尽くめだ。かつてランニング習慣を目論んで、ぜんぜん定着しなかったことがあったが、僕はスイミングだったんだな。さらに素晴らしいことにこの施設は夜までやってるので、なんなら平日の労働後に立ち寄ってもいい。マジでそんなことを始めてしまうかもしれない。
 帰宅後はもちろん寝る。水泳のあと寝ないなんて、水泳に対する冒涜ではないのか。1時間ほど、スカッと寝た。平日、労働後に水泳なんてしたら、僕は家に帰って晩ごはんを食べてビールを飲んで、そして9時ごろに普通に就寝することになる気がする。あまりにも健康的すぎやしないか。
 翌日は特に遠出の用件もなく、ファルマンに仕事もあったので、子どもらと近所の公園に行く。それぞれ先月新調した自転車に乗り、僕はその面倒を見る役。僕もファルマンの子乗せ自転車に乗ろうかと思ったが、ファルマンに「それは無理だ」と止められた。実際にふたりの自転車に乗るさまを目の当りにしたら、ぜんぜん無理だった。公園にたどり着くまで気を張って、なんだか疲れた。公園では久しぶりにバトンを大いに回した。最近は昼休みも寒いため、1月はほとんどバトンを回せていなかったのだった。しかし冬のバトンは服が邪魔であまりスムーズに回せない。小手先でできることだけをひたすらやった。
 午後は巻きずしの準備として、戻した干し椎茸を煮たり、海老を煮たり、卵を焼いたりする。節分なので恵方巻なわけだが、指定の方角を向いたり、切らずにかぶりついたりするわけではない。ただ巻きずしというメニューだけ献立として採用した次第である。巻きずしは前にも作ろうとしたことがあり、巻きすなどは家に揃っていた。しかしこれまでの作は成功したとは言い難く、「うまいこといかない料理」として僕の中に区分されていた。今回はその雪辱として、作り方をきちんと学習し、指示を忠実に守って作った。そうしたらわりとうまくできた。細巻きはもちろんのこと、太巻きもしっかりとごはんで中央の具を囲むことができて、味も良かった。これならお客さんがきたときのおもてなしでも出せそうだと思った。太巻き寿司は華やかでありながら、あらかじめ作っておいて、常温で出すことができるので、便利だと思う。なんでお客さんが来たときのおもてなしって言ったんだろう。そんなこと言わなければいいのに。
 巻きずしの夕飯のあとは、豆まきをした。豆は、大豆のあれではもちろんなく、テトラパックの甘納豆でもなく、今年はとうとうピーナッツや胡椒豆といった小袋がたくさん入った、おつまみアソートになった。どこまでも行事のあとの実利を希求した結果である。スーパーでもらった鬼のお面を家族で代わる代わるに着けて、その者に向かっておつまみの小袋を投げた。ピイガが幼稚園で、節分ということで鬼にまつわる本を読んでみましょうと言われ、おすすめの本として推挙されていたのが「泣いた赤鬼」とかだったそうで、「泣いた赤鬼」を読んだ上で、鬼に向かって「鬼は外」と豆を投げる行事をさせるのは、いったいどういうサイコパス的な発想なのだろうと思った。投げ終わったあと、子どもたちはあまり釈然としない顔で、それほどしょっぱくなさそうな、ピーナッツの袋を選んで食べていた。まあ釈然としないわな。もっとも煎った大豆もなかなかのものだけどな。仕方ないので来年は甘納豆も用意してやろうと思う。