やけに律義な冬、感動を伴って春へと

 今年の雪は、やけに律義に、休日めがけて降った。先々週もそうだったし、この3連休もそうだった。今日が出勤だったらめっちゃ嫌だったな、と思うと、少し得した気持ちになった。3連休ということもあり、こんな天候でなければ、泳ぎたい気持ちも手伝って、もしかしたらおろち湯ったり館に出向いたかもしれないが、とても雲南に繰り出そうと思える状況ではなかった。それでも平日に降られるよりよっぽどよかった。
 この3連休は、初日にだけ予定があった。それは、今年度末に開通する高速道路区間があるのだけど、その完成を記念して、この日だけは高速道路上を歩けるよ、という貴重なイベントで、僕はだいぶ前から愉しみにしていたのだった。ちなみにウォーキングのほか、サイクリングやランニングの部門もあって、こちらは競技というほどでもないが、有料制の事前申し込み企画となっており、実はランニングに関して少しだけ、参加するかどうか迷った。結局はよしたのだが、これは賢明だったと思う。なぜか自分はそこそこ走れるような気がしているが、冷静に考えればなんの根拠もなく、2kmあまりの距離の実家に走っていったときも、たびたび歩いたし、翌日はひどい筋肉痛になった。実際に参加したら、たぶん走り切れなかったろうと思う。それに加えて、本当に開催するのかどうか、とてもやきもきするはめになったはずだ。前夜の段階で、雪の情勢的に今回のイベントはすべて中止になるのではないかと思った。ウォーキングは当日受付なので、残念だけどそれならそれで仕方ないな、などと思いながら寝た。なので起きてホームページを確認し、「本日のイベントはすべて予定通り開催します」と堂々と宣言しているのを目にし、マジか、と思った。とても愉しみにしてたわけだけど、だけど、中止じゃないんだ、と。しかしやるからには行かないわけにはいかない。高速道路、歩きたいじゃないか。特別な思い出になりそうじゃないか。なので開始時刻めがけて、会場へと向かった。しかしみんな考えることは同じのようで、イベント会場である公園の駐車場は満杯で、臨時駐車場として近くの学校のグラウンドに車を停め、そこから送迎バスで移動するよう指示される。垣間見た会場の様子を眺め、ポルガが呟いた。「島根県民がみんなここに来ているんじゃないか」。もちろんそんなはずはないのだが、そもそも高速道路を歩けるというレアな機会であるのに加え、山陰の長くて淋しい寒い冬を過し、春の到来を前のめりで求めている島根県民たちが、イベントというものに飢えていたというのもまた真実であろう。かくいうわが家だってそうだ。仕方なく案内された学校へと車を走らせる。ところがこの移動中に、それまでもちらほらと降っていた雪が、一気に激しくなる。学校は思った以上に離れていたが、道中には歩いて会場へと向かおうとしている人々がいて、もはや吹雪といってもいい中を歩く姿は、八甲田山のようであった。到着した学校のグラウンドに車を停めたが、ずいぶんな距離なのに歩いている人がいるという事実が示すように、バスの本数は十分なものではないようで、待っている人の列は長く、だいぶ待たなければならない様子だった。そして激しく降る雪の中、バスを待ち、バスで向かった先でなにをするのかと言えば、高速道路を歩くのである。しかし高速道路を歩くもなにも、視界が閉ざされるような天候である。これは駄目なやつだ、とその場で判断した。ちょうど雪が強まって、下手に耐えてバスに乗ってしまう前にその判断ができてよかった。愉しみにしていたイベントに参加できなかったことは残念だが、僕が思い描いていた愉しさは、たぶんこの日の会場には存在しなかったろうと思う。工事が年度に合わせて計画されるがゆえに、完成して実際に稼働する前に行なうイベントが真冬になってしまうのは仕方ないのかもしれないが、今年はちょっとあまりにもひどい巡り合わせだったのではないか。
 というわけで、3連休の唯一の用件は立ち枯れ、あとはこまごまとした買い物以外、かなり粛々と家で過した。なにしろ寒波である。土曜日の午前中に激しく降った雪は、しかし夕方にはだいぶ溶け、これでもう山陰の寒波は終わりかね、と思っていたら、日曜日の朝はまた雪景色となっていて、1日ズレていたらイベントもなんの滞りもなく開催できただろうに、という忸怩たる思いを抱くこともなく、しかしその雪もまた午後にはだいぶ溶け、ふうやれやれ、いい加減これでおしまいだろ、と思っていたら、最終日である今朝がいちばん分厚く雪が積もっていた。窓の外を見た瞬間、膝から崩れ落ちそうになった。でもそれも午後の陽射しでやっぱり概ね溶け、そして明日以降、雪の予報というのはいよいよ見当たらなくなり、最高気温が15度などという予報も出てきたので、今度こそ冬は底をついたのではないかと思う。本当に、気色悪いほど休みの日に雪を降らせる冬だった。
 ちなみに雪で行動がままならず、家にこもって作業をしていた果以もあり、この1ヶ月ほど取り組んでいたスイムウェアのパターンの刷新が、無事に完了した。説明しても伝わらないと思うし、もしも書くとすれば当然「nw」ということになるが、3日間じっくり取り組んだからこそたどり着けたような、自身としてはだいぶ劇的で感動的な到達があったので、とてもいい3連休だった。スプリングハズカム。

長くて淋しい寒い冬だったけど

 なんとなく日頃よりアンニュイであるような気がしながら暮している。なにか特別な懸案とかがあるわけではないのだけど、どうも少し、生活に身が入っていない感じだ。山陰の冬にやられているのかもしれない。2月も中旬になれば、あえて探そうとせずとも、春の気配が向こうからやってくるような、そんなイメージがあったけれど、今年はどうもまだその感触が希薄である。冬至から2ヶ月近く経って、日は確実に長くなっているはずなのに、それさえあまり実感しないのだった。
 2月にプールが閉鎖するのは毎年のことなので、それを理由にすることはできない。泳げないことはもちろん僕の精神に暗い影を落としているけれど、そのぶん筋トレに本腰を入れており、われながらせっせと健やかに生きようと励んでいるな、といじましく思う。
 部屋ではもっぱら、筋トレとスイムウェアの製作ばかりやっている。スイムウェアは、「nw」で書いたように、型紙の修正に取り組んでいるのだが、これがなかなか難しい。いじればいじるほど、最初の形がいちばんよかったような気がしてくるのだった。
 これは「hophophop」に書いたことだが、今年はTシャツを新しく仕入れようと思っていて、そのためにとうとうメルカリに足を踏み入れた。これまではスイムウェアの販売をYahoo!フリマでしていることもあり、ものを買ったりするのもそちらでしかしたことがなかった。しかしTシャツの市場はメルカリのほうがだいぶ活況の様子だったので、いよいよ観念してアカウント登録をし、正式に入会した。
 Tシャツは、高校のクラTなどが手に入ったらいいなあと思っているのだが、検索方法が悪いのかもしれないが、なかなかそういうものは出てこない。この世で35人くらいしか持ってないものだから、さすがに売りにくいのかもしれない。非売品という括りで言うと、マラソン大会の記念Tシャツはわんさか出てくる。この世にはこんなにもマラソン大会があり、そこでは参加者にTシャツが配られ、そして売る人はすぐに売るのかと、これまで知らなかった方面の事実に、驚いている。ちなみにそれらマラソン大会のTシャツは、デザイン的にいいものもあるし、本当になんの縁もない、これまでそんな地名なんて聞いたことなかったみたいなマイナーな大会のTシャツを日常で着るというのも悪くないと思ったのだけど、いかんせん素材がコットンではなく、ポリエステルのメッシュみたいになっているものばかりなので、さすがにちょっとなあと思い、購入には至っていない。
 それにしてもメルカリという界隈は、風の噂で聞き知ってはいたけれど、どうやらかつてよほどの混乱があったようで、入会もマイナカードの写真を送信しなければならず厳重だったし、出品者のコメント欄には「ノークレームノーリターンでお願いします」や「神経質な方はご購入をご遠慮ください」などという文面が並び、写真では「このようなほつれがあります」などと言って、とんでもなく小さい糸つれみたいなものが提示してあったりと、治安の悪さと言うか、たぶん荒れに荒れていた時代を是正した結果、いま表面上は平和なのだけど、それは各人の警戒心の強さによってギリギリで保たれているに過ぎず、少しでも気を抜けばすかさず足をすくわれるのだという、修羅の世界の恐怖を感じさせるのだった。これに較べるとYahoo!フリマは牧歌的だなと思う。喩えるなら東京と地方みたいな感じだ。せっかく入会したからにはスイムウェアをメルカリでも販売しようかな、という思いはもちろんあるのだが、そんなわけで二の足を踏んでいる。
 近況はだいたいこんな感じで、なにしろどこかへ遊びに行ったりということがないので、あまりこのブログに書くことがないのである。早く春を感じたい。でも来週はまた寒波だという。嫌だなあ。もういよいよ嫌。ヒアカムザサン。