この3連休は、初日にだけ予定があった。それは、今年度末に開通する高速道路区間があるのだけど、その完成を記念して、この日だけは高速道路上を歩けるよ、という貴重なイベントで、僕はだいぶ前から愉しみにしていたのだった。ちなみにウォーキングのほか、サイクリングやランニングの部門もあって、こちらは競技というほどでもないが、有料制の事前申し込み企画となっており、実はランニングに関して少しだけ、参加するかどうか迷った。結局はよしたのだが、これは賢明だったと思う。なぜか自分はそこそこ走れるような気がしているが、冷静に考えればなんの根拠もなく、2kmあまりの距離の実家に走っていったときも、たびたび歩いたし、翌日はひどい筋肉痛になった。実際に参加したら、たぶん走り切れなかったろうと思う。それに加えて、本当に開催するのかどうか、とてもやきもきするはめになったはずだ。前夜の段階で、雪の情勢的に今回のイベントはすべて中止になるのではないかと思った。ウォーキングは当日受付なので、残念だけどそれならそれで仕方ないな、などと思いながら寝た。なので起きてホームページを確認し、「本日のイベントはすべて予定通り開催します」と堂々と宣言しているのを目にし、マジか、と思った。とても愉しみにしてたわけだけど、だけど、中止じゃないんだ、と。しかしやるからには行かないわけにはいかない。高速道路、歩きたいじゃないか。特別な思い出になりそうじゃないか。なので開始時刻めがけて、会場へと向かった。しかしみんな考えることは同じのようで、イベント会場である公園の駐車場は満杯で、臨時駐車場として近くの学校のグラウンドに車を停め、そこから送迎バスで移動するよう指示される。垣間見た会場の様子を眺め、ポルガが呟いた。「島根県民がみんなここに来ているんじゃないか」。もちろんそんなはずはないのだが、そもそも高速道路を歩けるというレアな機会であるのに加え、山陰の長くて淋しい寒い冬を過し、春の到来を前のめりで求めている島根県民たちが、イベントというものに飢えていたというのもまた真実であろう。かくいうわが家だってそうだ。仕方なく案内された学校へと車を走らせる。ところがこの移動中に、それまでもちらほらと降っていた雪が、一気に激しくなる。学校は思った以上に離れていたが、道中には歩いて会場へと向かおうとしている人々がいて、もはや吹雪といってもいい中を歩く姿は、八甲田山のようであった。到着した学校のグラウンドに車を停めたが、ずいぶんな距離なのに歩いている人がいるという事実が示すように、バスの本数は十分なものではないようで、待っている人の列は長く、だいぶ待たなければならない様子だった。そして激しく降る雪の中、バスを待ち、バスで向かった先でなにをするのかと言えば、高速道路を歩くのである。しかし高速道路を歩くもなにも、視界が閉ざされるような天候である。これは駄目なやつだ、とその場で判断した。ちょうど雪が強まって、下手に耐えてバスに乗ってしまう前にその判断ができてよかった。愉しみにしていたイベントに参加できなかったことは残念だが、僕が思い描いていた愉しさは、たぶんこの日の会場には存在しなかったろうと思う。工事が年度に合わせて計画されるがゆえに、完成して実際に稼働する前に行なうイベントが真冬になってしまうのは仕方ないのかもしれないが、今年はちょっとあまりにもひどい巡り合わせだったのではないか。
というわけで、3連休の唯一の用件は立ち枯れ、あとはこまごまとした買い物以外、かなり粛々と家で過した。なにしろ寒波である。土曜日の午前中に激しく降った雪は、しかし夕方にはだいぶ溶け、これでもう山陰の寒波は終わりかね、と思っていたら、日曜日の朝はまた雪景色となっていて、1日ズレていたらイベントもなんの滞りもなく開催できただろうに、という忸怩たる思いを抱くこともなく、しかしその雪もまた午後にはだいぶ溶け、ふうやれやれ、いい加減これでおしまいだろ、と思っていたら、最終日である今朝がいちばん分厚く雪が積もっていた。窓の外を見た瞬間、膝から崩れ落ちそうになった。でもそれも午後の陽射しでやっぱり概ね溶け、そして明日以降、雪の予報というのはいよいよ見当たらなくなり、最高気温が15度などという予報も出てきたので、今度こそ冬は底をついたのではないかと思う。本当に、気色悪いほど休みの日に雪を降らせる冬だった。
ちなみに雪で行動がままならず、家にこもって作業をしていた果以もあり、この1ヶ月ほど取り組んでいたスイムウェアのパターンの刷新が、無事に完了した。説明しても伝わらないと思うし、もしも書くとすれば当然「nw」ということになるが、3日間じっくり取り組んだからこそたどり着けたような、自身としてはだいぶ劇的で感動的な到達があったので、とてもいい3連休だった。スプリングハズカム。