春車

 髪がようやく、そこまで無理やりな感じではなく、結べるようになってきた。さらには気温もこのところぐんぐん上がっているので、ぼちぼち対外的にも「結んでいるほうが自然」みたいな空気が出てくると思う。そうやって伸ばし、結んで、ゴールは一体どこなのか。特に決めているわけでもないが、イメージとしては、女子弓道部の主将のようなポニーテールができるくらいまで伸ばせたらいいなと思っている。
 気温が上昇し、灯油は買い置きした分が果たして使いきれるだろうかと危ぶむほどで、そして今日は冬用タイヤからノーマルタイヤへの交換作業をした。春である。これはすなわち車の衣替えなので、あまりに明確な季節の移行行事である。そもそも冬用タイヤにしたのがいつのことだったか、と思い過去の日記を振り返ったが、どうも書いていないようだった。11月20日の鳥取旅行の際はまだノーマルだったろうと思うので、11月の終わりか12月のはじめくらいのことだったろう。だとすれば冬用タイヤ期間というのは3ヶ月半くらいか。まあそんなもんだろうな、と思う。季節って、春や秋が、夏と冬に押されて、なんとなく短いような先入観があるが(異常気象が前のめりに取り沙汰され過ぎるせいもある)、冷静にカウントしてみると、けっこうなんだかんだで12ヶ月を平等に分け合っているものだ。
 タイヤの交換は、実家で行なう。なにしろタイヤそのものが、実家の倉庫に置かせてもらっているのだ。MRワゴンは自前でやり、FREEDは、義父が自車も含めて依頼し来てもらう業者に頼む。軽自動車のタイヤ交換は、去年から年に2回のペースで行なっているため、僕もファルマンも、まあまあ会得してきた。しかし工程が把握できていても、倉庫からタイヤを出し、車まで運び、交換をして、再びタイヤを倉庫に戻すという作業は、やっぱり普通に疲れた。併せて義母の軽自動車のタイヤも、こちらは義父が中心となって交換し、さらには義父と僕のタイヤも業者の作業のために外に出しておいたりと、とにかくタイヤ三昧だった。思えば倉庫には、上記の4台分に加えて、三女のそれもあるので、常に20本ものタイヤが置かれているのだ。そして着用しているタイヤと、保管しているタイヤで、5人で合計40本のタイヤを所持しているのだと考えると、やけに多いことにように思う。タイヤ40本!
 実家ではイタリア料理店のテイクアウトのピザを、昼ごはんにいただく。おいしかったが、チェーンのデリバリーピザの、たぶんものすごく邪道な、あれやこれやを乗せたものに慣れている身(というほど頼んだこともないが、人生中で本格ピザよりはよほど多く食べている)からすると、端正だな……、という印象だった。食べやすく、おいしく、正しいが、はっきりいって物足りなかった。それでいて、正しいからか、わりといい値段を取るのだ(払ってないが)。餃子と一緒で、ピザは自分で作るものだな、と思った。あと、ピザを食べるにあたり、義父が冷蔵庫の奥から取り出してきたタバスコは、男子小学生の絵具を洗うバケツの水みたいな色をしていたので、「いるだろ?」と促されたが断った。あれはいったいいつから冷蔵庫にあるのだろう。どうもだいぶ前にも、なんの料理のときだったかはもう覚えていないが、タバスコを掛けるようなものを実家でいただいた際、同じやりとりをしたような気がする。あのときのタバスコと、今日のタバスコは、たぶん同一タバスコだろう。もしかしたら義父は、もうタバスコの正しい色を忘れてしまっているのかもしれない。
 タイヤ交換のあとは洗車もした。黄砂の時期に入っていることや、明日から雨だということは理解した上で、それでもこのタイヤ交換のタイミングで、冬の間の汚れを洗い流しておこう、今日という日はもう、車の世話に終始した日ということでいいじゃないか、という気概で行なう。するまではいつもあまりにも億劫なのだが、やったらやったでまあまあ気持ちがいい。ファルマンが車内に掃除機もかけてくれたので、車内環境もよくなったろう。嬉しい。
 2月は28日間なので、2月と3月の、日付と曜日の組み合わせは一緒になる。2月13日、バレンタインデーとして、ファルマンと子どもたちの手によるチョコレートのカップケーキを持っていき、ムーミンのチョコレートをもらったので、今日は僕の作ったカステラを持っていった。このために木曜日の夜に焼いて、冷蔵庫で寝かせていたのだ。最近の僕のカステラは、ふわふわ感も甘みも削ぎ落し、本当にただの、たんぱく質と糖質を取るための携行食めいてきていて、ホワイトデーの意味合いを込めつつのお持たせとしてはあまりにも無骨なのだが、そんなことは気にしない。8切れ持っていき、他の人は1切れ、僕だけ2切れ食べた。