自覚を持ってレジャー

 土曜日はポルガの部活がなかったので、レジャーに繰り出した。部活という要素を除いても、そろそろ、休日に一家でお出掛けというのが、それを当たり前のようにする時代というものが、終焉に近づいてきているのを感じ(子どもが嫌がり始めているわけではないのだけど)、チャンスがある限りはなるべくやっておこうと思うのだった。
 今回の目的地は大田市方面。大田市ってこれまであまり攻略してこなかった。前にも書いたかもしれないが、大田市って、岡山県で言えば総社市みたいな存在だな、と思う(ちなみに松江市が岡山市で、出雲市が倉敷市、雲南市が玉野市にそれぞれ対応する。これは僕の中でだいぶうまいこと言ってる感があるのだけど、いかんせん共感できる人間の数が限られるのが残念なところだ)。総社市、たしかに6年間でほとんど行かなかったもんな。
 大田市と言えば世界遺産である石見銀山なのだけど、石見銀山は家族連れが行ってもあまり愉しくないらしいので、それよりはもうちょっとエンターテインメント性がありそうな、仁摩サンドミュージアムに行った。少女漫画「砂時計」でおなじみの、砂の博物館である。漫画はあんまりちゃんと読んだことはないが、連載が2003年から06年ということで、大学時代、書店でバイトをしていた時期であり、当時わりと売れていたので、印象に残っている(この時期、「僕等がいた」もあって、ベツコミは盛り上がっていた)。1年にいちど引っ繰り返すという1年計の砂時計が世界最大のものとして有名で、ギネスの証明書も展示されていた。ちなみに3人は初めての来訪だったが、ファルマンは子どもの頃に来たことがあるという。そして職場でもここの話になったことがあるのだが、ファルマンも含め、行った人間は押し並べて、「そこまでつまらなくもないけど、まあ1回行けばいいかな」という感想を口にする。実際に行った結果、僕もまったく同じ感想を持った。万人に均一の感想を抱かせるって、ある意味すごいことのような気がする。
 入場券を購入すると、イラストに合わせて剥離紙が細かくカットされたシール用紙が渡され、それを持って所定のコーナーに行くと、さまざまな色の付けられた砂が用意されており、剥離紙を適宜剥がし、そこへ砂を振りかけて接着し、彩色していく、という企画があり、われわれ一家もそれぞれ作成した。
 

 左上から時計回りに、ファルマン、ピイガ、僕、ポルガである。わりと個性というかセンスが出る。ファルマンの素朴さ、ピイガの健気さ、僕の洗練、そしてポルガの混沌。これも含め、まあ予期していたよりはいくらか愉しめた。
 ちなみに博物館のすぐそば、同じ敷地内と言ってもいいような場所には公園があり、例のごとくわが家以外だれもいなかったのだが、ここにあるローラー滑り台は全長121mあり、地味に島根県で最も長いらしい。ポルガは3回、ピイガは2回、僕は1回、ファルマンは0回滑った。長いだけあり、登るのが大変だった。
 レジャーはこれでおしまいかと思いきや、そうではない。実はサンドミュージアムは今回のレジャーのメインではない。ついでなのである。車は大田市をさらに進み、突き抜け、美郷町へと突入する。目的地は、「ゴールデンユートピアおおち」という施設。ここは、昔ながらの保養地的なものなのか、宿泊施設に、テニスコートやレストラン、そしてプールにサウナに大浴場(温泉ではない)が備わっているという場所で、宿泊客でなくてもプールや浴場を利用できるというので、前々からなんとも気になっていたのだった。しかし存在はしているようだが、評判などの情報はあまり得られず、果たしてわざわざかなり長い運転をして行く価値があるのか、不安でなかなか行く決意ができずにいた。今回行くことにしたのは、まあ一家のお出かけの骨子というのは、要するに車での移動なんだよな、ということを思ったからで、目的地がいまひとつでも、一家でのドライブと思えばそれでいいじゃないかと、そう考えるようになり、ようやく決心がついたのだった。それで行った。
 行った結果、これが大成功だった。プールもサウナもほぼ貸し切りで、ウォータースライダーもあるのだが、子どもは完全にうちの子しかいなかったため、これも待ち時間0でやりたい放題と来ては、もはや上質なリゾート空間であった。普通はこの空間を得ようと思ったら、相当に高い金額を払わなければならないだろう。つまり島根県の山奥まで行くということは、相当に高い金額を払うことと同等の負荷である、と言えるかもしれない。僕と子どもたちは、それぞれ思う存分にプールを堪能した。去年の夏、とうとういちどもプールに行かず、1年以上ぶりのプールとなったファルマンは、ひたすら水の中に立ち、ピイガの世話をしていた。途中でさすがに申し訳ないような気がして、「ピイガの世話を代わろうか」と提案したら、「代わったところで私にはプールですることがない」との返事だった。でも1日の終わりに「愉しかった」とは言っていたので、嫌でしょうがなかったわけではないだろうと思う。
 そんなわけでとてもいいレジャーとなった1日だった。ゴールデンユートピアおおち、すごく良かったが、なにぶん遠いので、再び行く日があるかどうかは分からない。田舎の山の中の、ちょっと施設全体に異空間味のある、貸し切りのリゾートのようなプール体験、まだ行った翌日だというのに、早くも遠い日の思い出めいていて、まるで幼少期の記憶のようだ。なんだか不思議な体験だったな。これだからレジャーはいいな。