日御碕へ

 すっかりいい季節になり、各地でいろいろなイベントが行なわれていた。かなり目移りしたが、結果として、なぜか特になんの催しもやっていない日御碕へと足を運ぶことにした。
 途中の出雲大社では、駐車場に入る車による渋滞に巻き込まれ、道の選択を失敗したと思った。出雲大社の駐車場に入るための渋滞に、出雲大社に行かないのに巻き込まれるバカらしさ。なんとかそこを通り抜け、稲佐の浜を右に曲がると、右手になにやら行列が見える。なんだろうと思っていたらファルマンが、「あれは去年ピイガがカニを当てたやつだ!」と気付く。僕は参加しなかったので場所が分かっていなかったのだが、なぜか引き寄せられるように日御碕に行くことにした今日、ちょうど開催中のその横を通り過ぎたのだった。なんか運命的なものを感じずにいられない。こうなると今年もくじを引いたら当たったのではないかという気もするが、行列はその時点でだいぶすごいことになっていたので、並ぶ気にはならなかった。
 日御碕に行くのは、検索したところ日記には書いていなかったが、2020年の8月以来である(2021年の日記に、「去年の夏に日御碕灯台に行った」という記述があることから判明した。なぜ当時に書いていなかったかと言えば、コロナ禍で、県外に出たことはあまり大っぴらに言えない社会情勢であったことに加え、6月から無職になって、世間の夏休みが終わったら本格的に就職活動を始めなければならないという、なんとも嫌な精神状態での出雲帰省だったという、二重の理由があると思われる)。つまり3年ぶり。そう滅多に行く場所ではないので、行くたびに、たどり着くまでの道のりの大変さに驚く。それでも倉敷時代も含めて地方暮しももうわりと長いのでだいぶ耐性がついているが、僕はここに、大学生の頃にも来ている。もちろんそれが初めての日御碕であったが、ファルマンの帰省について数日実家に泊まることにした際、「日御碕に行くといいよ」と両親が車を貸してくれ、ファルマンとふたりで行ったのだ。横浜在住の、普段そこまで運転しない大学生に、両親はなぜあんなに気軽に車を貸し、そしてこの道のりのスポットを薦めたのだろうか。今となっては謎だ。僕が親の立場だったら、絶対にそんなことはさせない気がする。
 久しぶりの日御碕は、別になにも変わっていなかったが(星野リゾートのホテルは去年開業したらしいが)、3年前の来訪が、精神状態があれだったし、真夏でたぶん怠かったしで、あまり印象に残っていないこともあり、新鮮で愉しめた。灯台には登ることができるのだが、3年前、料金を支払って登りながらも、外の展望テラスには恐怖心から出られないという出来事があったので、今回は挑戦さえしなかった。ファルマンと子どもたちだけで登り、僕は地上からその写真を撮った。
 

 撮りながら、この天高くまっすぐ聳え立つ感じは、男性器のメタファーとして、LINEのアカウント画像にすると縁起がいいのではないか、セクハラではなく、セクハラと感じたのだとしたらそれはそう感じたあなたの頭が腐っているからじゃないですかと言える絶妙のラインではないか、展望テラスによる膨らみがちょうどカリ首っぽくてありがたいなあ、などと思ったので、家族関係なく何枚か撮った。とんびも写り込んだ。
 そのあとは崖のようになっている海岸線をぐるりと歩き、駐車場へと戻った。日本海らしい、打ちつける波のさまが絶景だった。日御碕、3年にいちどくらい来るとなかなか愉しめる。その程度の思い入れしかないが、アカウント画像にするやもしれない。誰が日御碕灯台やねん。スカイツリーやっちゅうねん。