友達のいない夫婦と経済

 起きたらファルマンが、「あなたにたくさん友達がいる夢を見た」と言ってくる。ちょっと斬新なパターン。僕が僕の夢の中で、友達に囲まれてハッピーでいるところをアラームに起され、「なんだ夢かあ……」じゃない。僕の夢友達は、僕本人じゃなく、ファルマンの頭の中の僕の所へ、間違えて行ってしまったらしい。相変わらずドジな奴ら! しかしそのあと、「それでたくさんのお友達を家に連れてきて、そうしたら私もわりと社交的で、明るく相手をしてた……」とファルマンは続けて言ったので、実際には絶対にそんなにファルマンは朗らかに対応できないに決まっていて、そんな自分になりたいのかどうかは知らないが(たぶん別に思っていないが)、やっぱりそれは「なんだ夢かあ……」の一種だったのだな、と思った。どちらにせよ哀しい夫婦の日曜日の目覚め。子どもは先に起き、ふたりで過していてくれたので、たっぷりと寝られた。
 準備をして、午前中のうちに買い物に出かける。ファルマンの眼鏡の新調が主目的でのショッピングセンター行きだったが、残念ながら「これぞ」というものには出会えなかったようで、今回も購入には至らなかった。正月に僕が買ったときにお店にあったやつが、いま思えばすごくよかった、あれを買えばよかった、私は注文してもレンズが取り寄せになるから横浜で買うのは尻込みしたが、郵送とか方法はいくらでもあったのだから買うべきだった、ということをこのひと月ずっと言うのだが、もう二度と巡り会えないだろうそれが、イメージの中でだいぶん美化されているのだと思う。厄介な人だ。以前、ちょいちょい買い物をした服屋を覗くが、トレンドが様変わりしていて、ぜんぜん趣味のものがなくなっていて、ショックを受ける。なんか、平面的な、素人が作ったみたいな、のぺっとした服ばかりだった。なんだろうかあれは。しかし、あんなもん誰が着んねん、と思って街の人を見たら、わりとみんなそんな服ばかり着ていてハッとするパターン。流行ってすごい。ほんとツーブロックとか、猫も杓子もしててびっくりする。かりあげくんじゃねえかあんなもん。
 というわけでSCでの買い物はとても不発。そのあと手芸屋に立ち寄り、ピイガの幼稚園の諸々の袋類を作るための生地を選ぶ。ポルガが黄色だったのに対し、ピイガは絶対にピンク。ピイガは、「女の子=ピンク」という図式がピタッと嵌まるタイプで、ああ女の子ってこういうことなんだな、女の子って本当にピンクでお姫様なんだな、と感心すると同時に、あれ? 女の子を育てるのはふたり目のはずだぞ? ひとり目のあれはなんだったんだ? 妖精的な、性別とかそういうんじゃない生きものだったのかな、と思う。ちなみに弁当箱などの持ち物のキャラクターは、ポルガがドラえもんで、ピイガがマイメロディ。これが端的にふたりの人格を象徴している。生地は、いいものに出会えた。薄ピンクをベースに、ウサギをはじめとした動物や、リボンやお城やハートやキャンディやカップケーキなどのイラストが細かく描き込まれた、とても「らしい」もの。よかった。これはいい。本当にピイガにぴったり。かわいく作ってやろうと思う。
 帰宅後はのんびりと過す。先日ZOZOで買った帽子が、サイズ「FREE」だったのに入らない、という悲劇が起り(ファルマンに引き受けてもらった)、「大きいサイズ」という注釈入りの帽子を新たに注文したりした。ウェブで見る帽子にはいろいろな種類があるが、「大きいサイズ」という制約を入れると途端に選択肢が狭まり、ああこれが4Lとかの服を着る人の気持ちなのか、と思った。わりと哀しいものだ。見識が広がった。そうか、僕の頭は、「FREE」として売られている帽子が、普通に入らないのか。道理で頭脳明晰なわけだと思った。
 晩ごはんはサーモンのお刺身に、ポテトサラダ。あと昨日の残りのホワイトシチューを汁物のような感じで並べた。スーパーでキャベツが安ければ、餃子を作ろうかという色気があった。しかし安くなかったのでやめたのだった。ニラはだいぶ落ち着いたが、キャベツはまだらしい。もっともキャベツが高いのは「やだなあ、もう」程度なのだが、冬場に白菜が異常に高いのって、もう自分が買うとか買わないとかじゃなく、お前それでいいのか、と言いたくなる。お前はキャベツと違って冬場に照準を絞ってコンディションを整えればいいのに、それができないって、お前はダメな子なのか、と思う。冬に白菜がこうだと、鍋業界全体が今年は冷え込んだことだろう。思えば今年はほとんど鍋をしていない。