大雨週末

 雨がすごかった。岡山に来て以来、こんなに強い雨が降り続いたことはない、と思っていたら、誰も経験したことのないようなレベルの雨なのだった。幸い、住んでいる場所や職場のあたりにはそれほどの被害は出ていない。しかし近ごろちょっと縁遠かった災害というものが、久しぶりに接近してきて、ああそうだ、災害というのはこういう感触のものなのだ、ということを思い出した。精神的にも物質的にも、備えを怠らないようにしたいと思う。
 そんな状況だったので、土曜日は外出できるはずもなく、ひたすら家で過した。そして休日にひたすら家で過すとなると、子どもたちが例の如くあまりにもうるさく、頭が疲弊した。途中で雨が小降りになったので、夕飯の買い物のため近所のスーパーにだけ車で行った。パンが届いていない以外、商品は普通に並んでいた。大嵐が来ると、海産物は変わらずあるのに、パンは来ないのか、とちょっと不思議な気持ちになった。晩ごはんは小さい鰯がたくさん入ったパックが安かったので、それを中心に野菜やきのこなどと、天ぷらにした。おいしかった。
 一夜明けて今日は、もうほとんど雨はやんでいたが、天候が戻ったがゆえにテレビ局のヘリコプターが飛びはじめたようで、倉敷市真備町の浸水の様子などが映し出され、それを見てびっくりしたらしい関東の人間たちから安否を訊ねる連絡が来たりした。
 さすがに2日連続で家に閉じこもっているわけにもいかないので、今日は図書館に出掛けた。次の人の予約が入り、返却しなければならない延滞の本というのがあり、昨日図書館職員から電話が掛かってきて、「なる早で返してほしいけどこんな状況だから無理はせんといて」みたいなことを言われたのだった。良心的な連絡だなあと感心した。それで、ルート的に無理はなさそうだったので、行くことにした。
 果たして道には問題がなかった。しかし道中、先ごろ植えたばかりの田んぼの稲が、水位が上がったせいで浮かび上がり、散乱してしまっている田んぼというのがずいぶんあり、痛ましい気持ちになった。今年もこれから農作物が高くなるのだろう。しかし仕方ないことだな、と思った。
 図書館の帰りに、ケーキ屋に寄ってケーキを買う。こんなときに何であるが、本日7月8日は、僕とファルマンが付き合い始めた記念日なのだった。今年でそれは何年になるのだっけと計算したら、僕が19歳、ファルマンが20歳のことだったので、15年前である。すなわち今年で15周年なのだった。ファルマンとは15年よりもよほど長く一緒にいるような気持ちになっているので、まだ15年? みたいな印象になるが、自分が19歳であったあの大学2年生の夏から15年の歳月が経過したのだと考えると、もう15年か……、という気持ちになる。ちなみに今年は交際開始15周年であると同時に、8月には結婚10周年というのが控えている。節目の年を意識しやすいという合理的な狙いでこういうことになっているのだろうか。もちろんそんなことはない。
 午後は家で過し、やはり子どもがうるさかった。子どもは本当にうるさい。休日の家にいる時間のほとんどは、子どものうるささのことだけを考えている。
 晩ごはんは手羽元に味を付けてグリルで焼いたもの。近ごろ味付けに青じそとか酢とか、そういうものを多く駆使するようになった。分かりやすい加齢だ。あと茄子のソテーに野菜スープ。夕食後にケーキを食べた。誕生日とかではないので、ひとつの大きなものではなく、4人が店で好き好きに選んだものを食べる。僕はフルーツの入ったミルクレープにした。おいしかった。ポルガに、「このケーキってどういう意味のケーキか分かる?」と訊ねたら、チョコレートケーキをばくばく食べながら、「分かんない」という答えが返ってきた。結婚記念日ならまだしも、親の交際開始記念日なんか知らんわな。
 そんな週末だった。まあ大雨で、被害ではないが、影響を受けた週末だった。