暑すぎる5月の運動会とトランプ

 5月なのに30度超えの暑さである。5月というのは本来はそこまで暑くならないもので、「気持ちのいい陽気」という触れ込みのもと、あちこちで野外イベントが企画される。そしてポルガの小学校の運動会も、この週末の開催なのだった。平日から週末の予報を見るたびに、「マジかよ」と夫婦で嘆き、職場でもさんざん「俺は週明け現れないかもしれない」と愚痴り、さらには神に祈ったりもしたが、高温過ぎて中止なんていう選択肢は現場にはないようで(まあ大変なのだろうという事情も解る)、あえなく開催される。ただし前日にプリントで、「すごく高温そうなのでうちわとか持ってくるといいよ」というお達しが来た。その、いまさら予定の変更はできないけど、なんにも対策を講じなかったわけじゃありませんよ、なんかあってもこっちに責任はありませんよ感はすごいな、と思った。しかし令和元年のプリントで、うちわ。予想していた未来はいったいどこへ行ってしまったのだろう。
 思い描いていた「気持ちのいい陽気」ならば、場所取りはしないまでも、開会式から参加して、3年生になった今年からは午後の部もあるので、現地でお弁当を食べて午後に備える、くらいの気概はあったが、とてもそんなことができる気候ではなかったので、開会式はパスし、ポルガの出場する競技に合わせて学校へ向かった。それを見届けたあとは、いちおうお弁当を持ってきてはいたのだけど、午後のポルガの出場演目までは2時間あまりあったので、やっぱりいちど帰ることにした。昼ごはんはどうせ生徒と家族は別々に食べるシステムになっているため、実は我々が学校で食べる意味はないのだ。それで冷房を利かせた自宅で食べ、しばし休息した。往復の移動と学校での滞在を合わせて1時間あまりの外出だったが、この時点でだいぶ身体に来ていた。2往復目となる午後の部は、たまらず自転車を使うことにした。最初からそうしていればよかった。そしてポルガのダンスを見届けた。見届けたら閉会式ももちろん待たず、すぐに帰ることにした。本当に、ぜんぜん外に居続けたらいけない条件だったのだ。帰ったら心底ぐったりした。僕なんか数ヶ月前の自分と較べてだいぶ身体が軽くなり、活動したら必ず昼寝をしなければならない人ではなくなったというのに、それでもやっぱり茹だるような暑さを前にしては歯が立たなかった。そうか、夏というのはこういうものだったな、と思い出した。筋トレなんかだと、疲れてもそのぶん身体が強くなるという救いがあるけれど、暑さに参るというのは、本当にただ身体がしんどいだけで、どこもなんにも成長しないのである。単なる疲労。これから数ヶ月続く夏のことを思い、暗澹たる気持ちになった。
 そのあとポルガも無事に帰宅し、なんとか誰も熱中症にならずに済んだな、と安心していたら、夕食後にピイガが吐いた。やっぱり免れられなかったか。幸い症状はそこまで重くなく、そのまま寝た。僕は小学校に何台も救急車が連なることになるのではないかと予期していて、実際にはそんなことにはならなかったけど、でもやっぱり夜とかになってこんな風になった人というのはいっぱいいたことだろうな、と思った。
 翌日の今日は、ピイガはまあまあの回復具合で、しかし全員でどこかへ出掛けられるほどでもなかったので、僕だけで外出した。ファルマンに「こんな機会にこそこないだの50メートルプールに行ってくればいいじゃない」と勧められ、色めき立つが、ホームページを確認したら大会開催のため利用不可だった。残念。そんなわけで何軒か店を回り、こまごまとした日用品の買い物だけして帰った。今日ももちろん暑い。今日がくんと気温が下がったら忸怩たる思いだろうからそれは別に構わない。午後は家でだらだらと過した。ピイガはだいぶ元気になった。夕飯のそぼろ丼もほどほどに食べた。そぼろ丼を食べながら、トランプ大統領が観にきた大相撲の千秋楽を眺めた。土俵に上がるための特製の階段と、あと賞状を片手で渡したのがおもしろかった。賞状を片手で授与する情景というのを、そう言えば生まれて初めて見たかもしれないと思った。