華やがない秋の日

 土曜日はピイガの幼稚園の運動会だった。週間予報ではだいぶ当日の天気が危ぶまれたのだが、蓋を開けてみたらなんとかなった。終始、今にも崩れそうな空模様で、しかし雨はとうとう降らず、そのため陽射しがなかったので万々歳だった(ただし蒸し暑くはあった)。運動会そのものは、もちろんつつがなく、そしてグダグダに進行した。幼稚園児の動きのことをグダグダと言ってしまうのは、語彙不足である気もするが、しかしまあどうしたってグダグダだ。小学校はそれでも、特に高学年になってくると、その動きのキレに感心したりもするが、幼稚園ではそれが一切ない。我が子が出ているときだけはテンションが上がるが、それ以外の時間は無感動にひたすらに待つほかないのだった。会の途中で義父母がやってきた。例のごとく義母の実家への顔出しが兼ねられるため、岡山へのフットワークは相変わらず軽いのである。「プロペ家における幼稚園の運動会はこれが最後」という事実が、今回はやってくるにあたってのキャッチフレーズとしてあったようだが、それがどうしたという気もしないでもない。来年からは小学校になるだけの話である。親子競技もあったので参加したが、親子がそれぞれペアを組んでなにかをするわけではなく、なぜか親子対抗戦で、園児チームはクラスメイトという結束があるため盛り上がっていたが、こちら陣営はほぼ初対面のおじさんとおばさんたちなので、チームワークもなく基本的に無言で、ただひたすらに居心地が悪かった。そんなこんなで正午の終了予定はだいぶ押し、年長のダンス演目をギリギリ見届けたところで、午後から仕事の僕はひとり退場した。仕事を終えて帰宅したら、15時頃までいたという義父母はもうおらず、まるで幻のような邂逅だと思った。
 日曜日はニトリに買い物に行き、ピイガの冬用の布団やカバーなどを買って帰った。午後はボールやバトンを持って外に出掛け、広場で子どもの相手をしてやる。ゴムボールを使っての、なんとなくのサッカー。小3と年長が相手だと、さすがにぜんぜん余裕でボールを操ることができるので気分がいい。学生時代サッカー部(あるいは他の運動部)だった奴とフットサルなんかをすると、たぶんとてつもなく嫌な気持ちになるのだろうと思うので、中学生になっても小さい子を従えて得意になってる痛々しい奴みたいな感じで、ずっとこんな感じでいいな、と思う。
 夜はもちろんラグビーを観た。決勝トーナメント、南アフリカ戦。技術的な部分はよく分からないが、とにかく向こうの選手の体の強さに衝撃を受けた試合だった。守備ではこっちの選手をめっちゃ止めるし、攻撃ではこっちに選手にぜんぜん止められない。じゃあもう物理的に勝てるはずがない。でも試合そのものはとてもおもしろかった。ラグビーの試合は「観られる」ということが判ったワールドカップだった。野球もサッカーも、僕は通して試合を観ることができないのだった。
 翌日の月曜日は、日曜日と、火曜日の「即位礼正殿の儀の行われる日」に挟まれた平日であり、ポルガは普通に小学校があったが、ピイガは土曜日の運動会の振り替え休日、そして僕は会社が勝手に「この日みんな有給取得ってことね」と決めた、うっすらグレーの休業日なのであった。たぶん世間がそうであるように、わが家においても平日と休日がマーブル模様に混ざる、ちょっと不思議な一日。一家揃っての休日だと、単独で出掛けるのはいかがなものかという風潮があるのでままならないが、今回はポルガがいないためそれが薄れ、しかも翌日の休日にはまた家族で出掛けるのだから、という言い訳も立つため、千載一遇のチャンスとばかりに、午前中にひとり外出を断行した。そしてジムとプールに行った。ジムは初めて行く場所で、なかなかよかったし、久々のプールも気持ちよかった。そこからさらにスーパー銭湯にも行ってしまおうか、という青写真もあったが、さすがに気兼ねして帰宅した。そして昼ごはんを3人で食べた。ポルガは16時頃になってようやく帰ってきて、そのあとすぐに英語塾へと出ていった。月曜日というのはたまたまそういう日(学校が長く、塾がある)らしいが、なんとまあ忙しいことか、と驚いた。晩ごはんは、今年初の生さんま。獲れない獲れないと言われている今年のさんま。100円で大々的に売っている解凍品の横で、たまにひっそりと数パックだけ並べられているが、それをとうとう買うことにしたのだった。ちなみに3尾で580円。この値段なら、「せっかくだし食べるか」という気持ちにならないこともない。そんなわけで約1年ぶりの生さんまは、格別においしい、ような気もしたが、世間で言われている「獲れないし、獲れてもあまり質が良くない」という文言に印象が引っ張られたのかもしれないが、脂が少ないような気もした。食べても思ったよりテンションが上がらなくって残念だった。
 そして本日の火曜日は、天気がとてもいい具合だったこともあり、お弁当を持って公園へと繰り出した。気候はいよいよ本格的な秋だ。陽が照ると暑いが、日陰ではとても過しやすい。ポルガはアスレチックで存分に遊び、ピイガはどんぐりを拾っていた。昼過ぎに帰宅してテレビを点けたら、今日が祝日である理由であるところの、即位のことをやっていた。しかし右でも左でもないので、本当になにも思わない。「節目ですなあ」と無感動に思いながら、30分ほど各局の映像を眺め、そのあとは読書などをして過した。晩ごはんはホイコーロー。甜麺醤はなかったが、味噌でわりといい具合に味が作れた。ごはんが進む、食べたいと思っていた味に仕上がったので満足した。
 そんな具合の、半日休+3連休だった。地味だな。