ポルガ9歳

 当日の22日が水曜日だったので、土曜日にポルガの誕生日の祝いをした。9歳である。しかし8歳が9歳になるのって、どうしたって感慨がない。ひと桁最後の年、というならそれはそうなのだが、それは来年迎える10歳の、10という数字の衝撃に引っ張られているだけの感慨だろう。それにしてもポルガの誕生日は、同時に「東日本大震災から今年で何年になるのか」に思いを馳せさせることだ。
 誕生日が平日なので土曜日にお祝い、といいながら、珍しくポルガには半ドンの授業があった。いまどきの小学校は、道徳やら英語やらプログラミングやら、かつてはなかったカリキュラムが増えたわりに、休日の数は増え、こなさなければならない授業数は汲々らしく、始業式や終業式の日に通常の授業をしたり、こうしてにわかに土曜日が登校になったりするのだった。でもそのおかげで、ファルマンは午前中に仕事をし、僕はピイガとともにお祝いの準備をすることができた。ケーキや晩ごはんの材料を買い、そしてケーキを作ったりした。
 昼過ぎになってポルガが帰ってきたので、すぐに車で出掛ける。昼ごはんは本人のリクエストにより回転ずしなのだった。例のごとく僕は、ほとんど店では食べず、折詰めにして夜に日本酒とともに頂く、ということをしたかったのだけど、今日はこのあといくつかお店に寄ったりする用事があったため、泣く泣く諦め、店で食べた。すしを食べて日本酒が飲めない状況って、どうにもやるせない気持ちになる。
 帰宅後はおやつを食べ、晩ごはんの準備。誕生日のお祝いの日の晩ごはんは、毎年恒例のたこ焼きである。すしも、たこ焼きも、ポルガは本当に食べものとして味が好きというより、細かいものがたくさんあっておもしろいので好きなだけなんじゃないか、と思う。別にいいんだけど。焼くのに時間が掛かるので、早い時間から始めて、食べる。おいしい。ホームたこ焼きは、準備から焼くまで終始面倒だけど、なんだかんだで愉しくておいしい。ただしその愉しさとおいしさが、面倒さに勝つか、といわれるとそこまでではない。子どもが喜ばないなら決してしないメニューだろう。まあ誕生日様のリクエストならば仕方ない。
 たこ焼きのあとはケーキ。今年のケーキは、これも本人のリクエストにより、のび太ケーキ。
 

 何度もいうようにポルガは目下、「ドラえもん」にぞっこんなのだが、それでドラえもんが好きなのかと思いきや、好きなキャラクターは実はのび太なのだという。のび太ってそんな、ドラえもん派のび太派に分かれるような、そういうキャラではないだろう、素直にドラえもんが好きであれよ、と思うのだが、本人の中でそこは譲れないようで、学校の仲のいい友達からも、のび太デザインのマグカップを送られていた。友達に対しても、ドラえもんよりのび太が好きなのだという主張をしているようだ。そんなことあまり知らなった僕は、ドラえもんケーキならば、頭の部分に切ったいちごをバーッとあしらって、赤いのはドラえもんじゃなくてミニドラだけど、そんなふうに仕立てればいいな、と考えていたのだが、急遽のび太に方向転換し、このような仕上がりとなった。いちごはカットせずにまるごとスポンジの間に挟んだ。そのため厚みのあるケーキになった。髪の毛の部分はココアパウダー。ココアパウダーはだいぶ余ったのだが、どうせ20日後くらいに使うんじゃねえの、と思った。まあまあうまくできたと思う。本人の指は、左手はパーになっていて、両手で9を表しているものである。見て喜んでいたのでよかった。味もなかなかよかった。まるごとのいちごが中に入ってるのっていいもんだな、と思った。
 誕生日プレゼントは顕微鏡。いろいろ観察すればいいと思う。
 そんな9歳の祝いであった。8歳からの1年で、だいぶ成長したような、相変わらず甘ったれで幼児じみたところがあるような、微妙な感じ。ほぼ4年生ともなると、同級生の女子の中には、もういっぱしの女子な感じの子も出てきているようだが、ポルガには一向にその気配がない。決して父親の希望的観測ではない。相変わらず昼休みにはひとりで校庭を走っているようだし。