クリスマス2021

 今年のクリスマスを経る。
 24日の晩ごはんのメニューは、近所のスーパーで予約していたローストチキン以外、ファルマンが「作れる気がしない」「ひどいクリスマスになる」などとしきりに訴えるので、面倒になって、23日の仕事帰りにフランスパンや生ハムやテリーヌなどを買ったほか、夜にミネストローネとマカロニのサラダを作った。かくして迎えたクリスマスイブのディナーは、ローストチキンもおいしかったし、なかなか豪勢でよかった。1年前のクリスマスは、岡山と島根、別々の暮しの中で、非常にゴタゴタ、バタバタしていたので、隔世の感がある。俺も小さくまとまったもんだ、とも思うが、別にそうでなかった時期など若い頃を含めてなかったような気もすることとして、安定は尊いな、ということをしみじみと思った。12月ずっとリビングにあったクリスマスツリーに、今宵ばかりはコンセントを繋いで電飾を点灯させ、食事中も、無音は味気ないからということで、ネットのサービスでクリスマスソングをかけた。それでいろんな曲を聴いたが、その中で「ママがサンタにキッスした」が流れ、これまで不思議と気にしていなかったが、これってぜんぜんネタバレなんじゃないか、と衝撃を受けた。なぜあんな歌が、子どもが聴きそうな他のクリスマスソング群に紛れているのだろう。幸い、今年もピイガはもちろん、ポルガもサンタクロースの存在は信じてくれている。信じるもなにも、イメージする第三者としてのサンタクロースはたしかにいないが、12月24日の夜にサンタクロースになる親がいるのだから、「サンタクロースなんて本当はいない」なんて、逆に間違いだろうとも、毎年身銭を切ってプレゼントを購入しながら、フィンランドの老人の手柄になる不条理を味わっている親として、思う。サンタクロースはたしかにパパだ。でもパパがサンタクロースなのだから、じゃあサンタクロースはサンタクロースではないか。とはいえ今年に関しては、クリスマスだってのに仕事がぜんぜん納まる様子がない僕は、翌25日土曜日も出勤だったため、宵っ張りのポルガが深い睡眠に入るまでなどとても起きていられず、ファルマンに役目を託して早々に寝たため、厳密にはサンタクロースをしていない。ちなみにファルマンは午前1時くらいまで、仕方なく寒い中リビングで待機したらしいが、いよいよ我慢の限界を迎え、さすがに寝たもののまだ眠りが浅そうなポルガの待つ(ピイガはとっくに就寝)子ども部屋に突入し、プレゼントを置くくだりをしようとしたらしいが、そこでやはりポルガは寝ぼけながら起きる様子を見せたため、ファルマンは咄嗟に、自分はあくまで子どもたちの布団を直してやりに来ただけだが、なんかプレゼントが置いてあったよ、サンタさんもう来たんだね的なストーリーを即興で仕立て上げ、なんとかごまかすことに成功したらしい。さすがわが家の北島マヤ。かくして今年のプレゼント配送も、つつがなくはなかったものの、なんとか済んだのだった。
 朝のプレゼントの開封も、僕は見ることができなかったわけだが、見たい気がすると同時に、喜ぶだろうなとこちらが想像するリアクションと、実際の相手のリアクションの相違とか、なんかそのあたりのことを思うと、自分のいない場でやってくれたほうがいいかな、なんてことも思うのだった。もっとも子どもたちの反応はとてもよかったようで、ならばよかったと思う。内容は、ピイガがポケモンのZリングなるものと、お気に入りのポケモンのぬいぐるみと、大きなホワイトボード。ポルガが、「らんま1/2」のCDと、電子辞書。1年にいちど、起きたら枕元に、かねてから欲しいと思っていたものが置いてある朝があるって、どれだけしあわせなことだろう。うらやましいな。まあ僕も、クリスマスプレゼント&1年の慰労という名目で買ったトレーニングベンチの、毎晩すぐ脇で寝ているので、大雑把にいえば同じようなものかもしれないけれど。
 かくしてクリスマスは無事に終わったのだが、去年に引き続いてクリスマス寒波がやってきて、今朝26日の朝、窓の外を見たら雪景色になっていた。雪が心配でやっぱり帰省できない、という決断をした手前、意外とぽかぽか陽気になどなられたら若干困るので(そしたら行くまでだが)、こう完膚なきまでに、年末年始に中国山地や日本アルプスを越えようだなんてよせ、といわれているような気候になると、きっぱりあきらめがつく。年末年始は近隣でおとなしくしていよう。今日は子どもを実家に預け、ファルマンと少しだけ買い出しをして(猛吹雪という局面もあった)、その間に子どもたちは雪で大いに遊ばせてもらったようで、僕もファルマンも雪遊びになんか本当に付き合いたくないので、うまく動けた休日だったと思う。ちなみに週末から冬休みに入った子どもらは、年明け、土日と成人の日がうまい具合に組み合わさり、これから実に半月くらい冬休みなのだった。うらやま! 晩ごはんは鍋ラーメン。身に染みた。汁物を啜って冬をやり過ごそうと思う。