クリスマス 2022

 今年のクリスマスは、24日が土曜、25日が日曜日ということで、動きやすかった。いろんな業態の人がいるので一概には言えないが、それでも人類全体の幸福の総量は、そうじゃない年に較べ、高いのではないかと思う。もっとも金曜日あたりから襲い掛かってきたクリスマス寒波によって、北陸や東北ほどではないにせよ、山陰の交通網もかなりの影響を受け、岡山に行こうとしていた義両親も、広島に行こうとしていた義妹も、それぞれあえなく計画を取り止めていた。山陰の冬は本当に、空は荒れるし、中国山地越えは過酷だしで、とてもカジュアルに閉ざされることだと改めて痛感した。
 われわれ一家は、もちろんはじめからそんな大掛かりな予定などは組んでおらず、実家が予定では無人になるはずだったので、犬の世話を依頼されていたのだが、それも上記の理由により免除となったため、割合と平穏に過すことができた。唯一ポルガが、24日は例の科学クラブみたいな教室に午前も午後も行くということで、その送り迎えをし、午前と午後の間には家族で回転すし屋に行ったり、そのついでにもろもろの買い出しをしたりした。
 夕餉のメニューは、ミートソースグラタン、フライドチキン、スモークサーモン、テリーヌ、コーンスープ。そしてビール。なかなかに脂質たっぷりのメニューで、さらにこのあと、今年は珍しくケーキ屋で予約し購った、ブッシュドノエルを食べた。返す返すも、健康診断がクリスマスの前でよかったと思う。気兼ねなくおいしく食べ、飲み、しあわせな聖夜だった。
 ここで娘たちの描いたクリスマスポスターを載せておく。
 まずピイガ。
 

 平和である。「クリスマスになった! やったー!」というコピーの、素直さがいい。結局うれしいときは「やったー!」に勝るものはないな、と心が洗われるようだ。
 続いてポルガ。
  

 ここでアップしている画像としては、2枚をほぼ同サイズにしているが、実際はピイガのそれがA4であるのに対し、ポルガはA4を4枚貼り合わせているので、A2判ということになる。単純にでかいし、そして見ての通りの描き込み量なので、なかなかに圧倒される。しかも少年少女たちは吹き出しでなにを言っているのかと言えば、「ドッペルゲンガー」であったり、「パラレルワールド」であったり、「月夜でないよ、銀河だから光るんだよ」であったり、「りんぴょうとうしゃかいちんれつざいぜん」であったりと、めいめいにわけの分からないことを言っているので、眺めているとだんだん頭がぐわんぐわんしてくる。要するにこれは、ポルガの頭の中そのものなのだな、と思った。
 それから夜が更け、自分たちが寝る直前、子どもたちが完全に寝ているのを確かめ、フォッフォッフォする。このブログの読者で、もしかしたらまだ真実を知らない人がいるかもしれないので濁すが、忍び足で部屋に入り、つつがなく例の行為をした。
 翌朝、ピイガが満面の笑みでわれわれの寝室にやってきて、「トランポリンがあった!」と報告してくる。今年のピイガのサンタさんからのクリスマスプレゼントは、トランポリンなのだった。見に行くと、ベッドの脇、部屋の中央に、ドドンと円形のトランポリンが鎮座していた。「わあ、すごいすごい!」とリアクションをしたが、実はそれを置いたのは6時間前の僕なんですよね。実はサンタって本当はいなくて、親がやってますからね。それからポルガも部屋から出てきて、「全集じゃなかった……」と少し口を尖らせながら言った。ポルガは「藤子・F・不二雄大全集」を所望していたが、届いたのはてんとう虫コミックス版の「ドラえもん」全45巻(+0巻)だったので、少し肩透かしを喰らったらしい。阿呆か、と思う。大全集は119巻あり、総額は22万円くらいになる。値段も置き場所も現実的じゃないし、なにより声を大にして言いたいが、全部がおもしろいわけじゃない。それよりてんとう虫コミックス版のドラえもん全巻のほうが、読みやすいし、いいと思う。あと金額的なことを言わせてもらえば、これだってだいぶするんだからな。期待していたものと違って最初は不満げだったポルガだったが、しばらくすると気を取り直し、怒涛の勢いで読み始めていた。そしてピイガはひたすらトランポリンで跳ねていた。そんなクリスマスの朝だった。
 日中は、トランポリンの衝撃を吸収するためのマットや、ドラえもんを収納するための本棚を買いに出た。サンタは、品物を届けるだけ届けて、そういったアフターケアに関しては無頓着なのだった。おかげで親は思わぬ出費を強いられた。さらに言えば、繰り返しになるがサンタって実はいなく、トランポリンもドラえもん全巻もわれわれが購っているので、なんかもうただひたすらの出費である。子どもはずるいな。
 それにしてもポルガあたり、そろそろサンタの正体について真相にたどり着いてもぜんぜんいい頃だと思うのに、一向にその気配がない。ピイガと一緒に、「トランポリンなんて大きいもの、どうやってソリに載せてたんだろう?」などと語り合っている。本当だろうか。初潮が来たり、国の歴史や公民について学んだりする一方で、サンタの存在を無垢に信じるなどということが、果たしてあるものだろうか。しかしポルガの性格上、サンタが本当はいない(親がやってる)と確信したら、ピイガへの配慮など一切なく、そのことを普通に口に出すに違いないと思うので、じゃあやっぱり信じてるのかなあ、とも思う。まあ大人だって、それぞれのバイアスで世界を見ているわけだから、子どもだけが歪ということでもないわけだけども。
 かくしてクリスマスも終わり、子どもたちは今週末で2学期が修了していて、僕もあと数日で仕事納めとなる。あとはもうオートメーションのように、「年末年始」がやってくる。ちなみに今年のようにクリスマスが土日だと、大みそかと元日もまた土日になる、ということを知った。なぜかこれまであまり意識したことがなかった。クリスマスイブと大みそかは、いつだってちょうど1週間離れているのだ。だからどうした、と言われると困るけれど。