師走の昨日と今日

 1月は行く、2月は逃げる、3月は去る、などという言い回しがあるけれど、そんなことを言うなら12月ってすごくないか。それら3つの月が、それでも一時は自分と一緒にあるのに対し、12月って、もはや横目に通り過ぎるのを見る、くらいの感じだと思う。邂逅してない。流れる怒涛の中、少しだけ垣間見えるくらい。そんな関係性だ。
 昨日18日は、世の中で「M-1グランプリ」と「鎌倉殿の13人」の最終回が被ってしまってどうしよう、ということが論議されている夜だった。しかしテレビ朝日系列が映らない島根に住む俺には関係のない話だと、秋口からの「M-1」の情報を目にするたび、ケッ、といじけていた。ところが直前に、今年の「M-1」はTVerでライブ中継するということを知り、無事にリアルタイム視聴することができた。よかった。
 子どもたちがいては漫才など聞けないので、部屋でひとり、晩ごはんまで持ち込んで、去年の恨みもあり、本腰を入れて観た。結果、大会そのものの盛り上がりはそこまででもないように感じたけれど、優勝したウエストランドはたしかによかった。現実ではなかなかそういうわけにはいかないからこそ、テレビはじゃんじゃん悪口系の笑いをやっていけばいいと思う。無理だろうけど。
 そのあと、録画していた「鎌倉殿」の最終回をファルマンとともに観る。テレビばかり観ていた夜だった。最終回なので、なんだか最初から最後までずっと寂しかった。大河ドラマの最終回は、そのまま主人公の死期なので、いつも寂しい。また義時の死に方の寂しさったらなかった。でもこのドラマがあったおかげで、1年間とてもおもしろかった。
 「M-1」が終わり、大河ドラマが終わり、なんかもう、ちょっとすれ違っただけの12月は、その姿さえ視界から消え、ぼんやりとした輪郭しか残っていないかのようだ。ちなみにこの晩、深夜1時ごろからは、ワールドカップの決勝戦も行なわれていた。アルゼンチン対フランスは、アルゼンチンが勝利し、大会最優秀ゴールキーパーの賞を受賞したアルゼンチンのエミリアーノ・マルティネスは、受け取ったゴールデングローブのトロフィー(実物大の黄金の手の形)をその場で股間に当て、勃起チンポ的なジョークをかましたそうだ。よかった。そういうの、本当にいいことだと思う。国とか、スポーツマン精神とか、リスペクトとか、そういうのを超越した、真の歓びが伝わってくる。中東で行なわれたノンアルコールの大会で、最後の最後にそれがあったということに、勇気をもらった気がした。あとどうしてもこれが言いたい。これがほんとのアルゼンチンってね!
 翌日の今日は、相変わらずの寒波で、窓の外は雪景色だった。それでも労働中は暑くなり、先週は水曜日にワクチンを接種した影響でろくにプールに行けなかったので、今日こそは行くぞと思いながら仕事をしたのだけど、退勤して会社から一歩出た瞬間に、本当にろうそくの火が消えるかのように、フッと意欲をかき消された。会社の玄関から駐車場の車までの50歩くらいで途端に手がかじかむような、容赦のない寒風。プール……、だと? と、先ほどまでの自分の正気を疑いたくなった。行ったら行ったで、プール内も水も冷たくないし、泳いだあとは熱いシャワーを浴びるしで、決して自殺行為というわけではないのだけど、とにかくこの寒さの中、プールに足を運ぶということのモチベーションがもたない。さすがに無理だった。週の半ばは少し寒波が収まるようなので、そこで行ければいいかな、と思う。
 脈絡のない、雑然とした日記になったが、だいたいそんな師走の昨日と今日を過した。