山陰の2月なのに晴れた週末

 2月の山陰とはとても思えない、晴れやかで温暖な週末だった。もちろんこれは期間限定のもので、週明けからは気温が下がり、さらには荒れるという予報である。であればこそ、この2日間の尊さが際立つというものだ。結果的に、こうしちゃいられない衝動に突き動かされた2日間となった。
 土曜日は午後から一家で公園へと繰り出した。公園を目的地としたのはいつ以来だろうか。去年の秋は、なんだかんだでそういうことをしなかったような気がする。行ったのは平田にある愛宕山公園。図書館にも行きたかったのでその選択となった。前回に行ったのがもうだいぶ前で、シカやヒツジやヤギが飼育されているということ以外、ほとんど覚えていなかった。遊具はそれほどでもなかったはず、と思っていたが、行ってみたらたしかにそれほどでもなかった。そもそもがだいぶ小さい子向けで、中学1年生と小学4年生は明らかに対象ではなかった(それでもポルガはぜんぜん気にせず遊んだ。さすがだ)。しかし名前にあるように山に作られた公園なので、案内に従って進むと展望台に辿り着き、そこからの景色がとてもよかった。晴れて暖かいだけでなく、空気がとても澄んでいたのだ。本当にいいコンディションの日だったのだ。東のほうに視線をやると、遠くに雪を被った山があり、どうやらそれは大山であるらしかった。三瓶山にしろ大山にしろ、なるほど名のある山というのは見事な見た目をしているものだな、と思った。とてもいい散歩になった。そのあとは図書館に寄り、さらには平田に来たあともうひとつの理由である、先月くらいにオープンしたダイレックスにも寄った。平田にダイレックスができたとは聞いたが、いったいどのあたりにできたのかと思っていたら、なんのことはない、図書館の本当にすぐ近くだった。まだオープニングセールを継続していて、肉がとても安く、喜んで買い込んだ。ほくほくと、すばらしい平田行きであった。
 晩ごはんは鶏の唐揚げ。ポルガが翌日、お弁当行事なので、そのおかずのためのメニューである。今週から週末限定とした酒がおいしかった。ちょっと久しぶりのビールに体が驚いたのか、喉の奥や胃のあたりから変な音が出た。
 翌日も同じような天候で、ポルガは科学教室の課外活動で、貸し切りバスに乗って遠出だという。うらやましい。もうこの陽気の中、貸し切りバスで移動するというだけで、成功は確約されていると言ってもいい。帰りは夕方ということで、姉ひとりが愉しそうなイベントに参加し、取り残されたピイガがあまりにも不憫になる。そこで前から存在は知っていて、でもなんとなく足が向かずにいた、実は車で30分足らずで行ける屋内温水プールに、とうとう行くことにした。ファルマンは仕事を抱えていたが、初めてのプールでピイガを更衣室でひとりにするのは心配だということで、仕事道具を持って付いてきてくれた。今は休館している行きつけのプールが、ありがたいことにとても近所にあるため、やけに遠いように感じていたが、まあ車で25分くらいなので、実は倉敷時代に児島のプールに行くよりも近いのだ。倉敷時代は、どこへ行くにも30分以上の移動は当たり前だった。今はコンパクトシティ(もとい、栄えているエリアがほぼ1箇所しかない)に暮しているので、感覚がちょっと変わっている。初めて行ったプールは、ファルマンも子どもの頃に何度か行ったという場所で、しかしどうやら近年に改装がなされたようで、とても新しげできれいだった。窓から陽光がたっぷりと降り注ぎ、もちろん空いていて、非常に良かった。プールからガラスを隔てて見学席があり、好都合なことにそこにはテーブルもあったので、ファルマンは快適に仕事ができたという。ピイガは久しぶりのプールにはしゃいでいて、連れてきてよかったと思った。僕もピイガの相手をする合間に、25mのプールできちんと泳ぐということができたので大満足だった。やっぱり50mや100mをしっかり泳ぐと気持ちがいいな。通勤の方向とは残念ながらぜんぜん違うのだが、向こうのプールはまだまだ再開しないので、必要を感じたらまた来ようと思った。
 そんな感じで、2日間とも陽の光を存分に浴びて、山陰の冬で溜めた鬱屈がだいぶ癒された週末であった。まあ実際、冬はもう虫の息と言っていい。しかし虫の息と言うと、春のほうがよほど虫の息吹をイメージさせるため、ちょっとややこしいことになる。