春だったり冬だったり

 先週の土曜日は労働だった。それなのに珍しくポルガの部活は休みで、擦れ違いなのだった。それで家族3人はどうしたかと言えば、子どもたちはドラえもんの新作映画を観に行ったという。「のび太の地球交響楽」という、音楽をモチーフにした作品。朝いちばんの上映を予約し、当然ながらファルマンが送迎した。子どもたちがふたりだけで映画を観たのは初めてで、成長を感じさせるような、ただ単にゆめタウンまで連れて行ってもらって席に座ってドラえもんを観ただけだからぜんぜん大したことではないような、いまいち判断がつかない感じである。ちなみに僕は小学生の頃、同級生と田園都市線に乗って渋谷に出て、映画を観ていた。それに較べるとやはりだいぶ箱入りな気がする。
 映画を観終えたあとは、3人でマクドナルドを買って帰るという計画を立てていて、前日にファルマンが予約注文のためにマックのアプリをダウンロードしようとしたところ、例の全世界的なマックのシステム障害が発生していて、叶わなかったという。このあまりの絶妙すぎるタイミングに、思わず「このシステム障害は君がダウンロードしようとしたせいなんじゃない」と軽口を叩いたら、「それ、ポルガにも言われた」と言われた。あなたたちって本当に似た性格してるよね、とも。そんなことはないだろう。傍でポルガの発言を聞いていて、こいつ性格悪いな、と思う場面が多々あるのだが、僕がそう感じるということは、ポルガは僕を凌駕しているということだと思う。結局予約はできなかったが、店舗は営業していたため、無事に購入できたらしい。買ったのはもちろんドラえもんのおもちゃが付くハッピーセット。マイクやボンゴなどが当たっていた。鳴り物+ピイガの組み合わせがうるさいったらありゃしない。あとボンゴという言葉が出るたびに、自分が「たたけボーンゴ」とマツケンサンバⅡの一節を唄い出すのが我ながらウザいと思った。
 日曜日は、午前中はポルガが部活だったため、僕とピイガで例のプールに行った。「例のプール」というと、思わずあの「例のプール」を連想してしまうが、もちろんこれは新宿区の話ではない。島根の、だいぶ山奥にある健全なプールである。2月の、あのいま思えばどう考えても異常だった温暖な陽気の日ほどの感動はなかったが、それなりに愉しく泳いだ。ちなみにこの日の営業から、おろち湯ったり館では2階が開放されていた。なんならオープンめがけて行って、今年度の2階の最初の客になるというのも悪くないと思ったが、昨日のこともあったので、午前中はピイガを受け持つことにしたのだった。
 午後は近場の買い物をこなし、あとの時間は筋トレや縫製をして過した。水着作りを着々とやっているが、思ったよりも数がいかない。そこまで集中してやれているわけではないというのはあるけれど、せっかく売り出すのならやはりある程度はまとまった数をこしらえてから始めたいと思っているので、もどかしい。
 それから平日を2日間やって、本日は春分の日で旗日。そして今日が休みでよかった、と心の底から思うような、何度も目が覚める夜通しの暴風雨であった。気温もぐっと下がり、三寒四温という言葉の範疇を大きく逸し、真冬のようになる。暖冬という肩書を保持しながら、陰ではコソコソとこうして悪事を働く、性根が姑息な今年の冬の、ラストにして真骨頂を見たような気分だ。
 午前中はポルガが部活だったため、残った3人は家でのんびりと過した。僕はドラクエ11をやった。昨晩もやっていて、いま主人公が魔王を突っついたせいで世界が崩壊してしまったところ。世界中の人々が希望をなくしてしまってしゅんとしてしまっている感じが、2017年の発売ながら、その3年後あたりの現実世界のようだな、などと思った。
 午後は買い物と、せっかくなので墓参りを行なう。先だっての葬儀では、式に参加しなかった子どもたちは手を合わせる場面もなかったので、ここらでひとつ、じいさんも含めて顔を見せておこうじゃないかと思ったのだった。偉い。普段ひねくれたことを言いつつも、なんだかんだでそういうところは律儀というか、仁義があるというか、人間的に立派だよね、と思う。誰も言ってきたりはしないので、自分で思っておく。雨はやんでいたが、風があり、線香に火を点けるのに往生し、凍えた。
 帰宅して、おやつはおはぎ。あずきときなこをそれぞれ等分し、ファルマンと分け合って食べた。久しぶりでおいしかった。子どもたちは、ピイガは出せば食べたかもしれないが、ポルガが餅系を拒絶するので、ポルガだけふわふわした洋菓子とかだとピイガがかわいそうだと思い、ふたりともそういうものにした。スポンジとカスタードクリームの、おいしそうなやつ。おいしそうだった。なんで親だけ、お彼岸に義理立てておはぎ喰ってんのかな、と思った。
 晩ごはんはひな祭りのあたりにすっかりやり忘れた、ちらしずし。あと先日の手巻きずしの際に唱えた、すし酢の香りを嗅ぎながら食べると玉子焼きとかたらこマヨとかアボカドとか納豆とかの、本当はすしじゃないやつが滅法おいしく感じられるという説を立証するため、そういったものたちをごちゃまぜにした、サラダというか、もはや酒の肴そのもの、みたいな和え物を作り、サイドメニューとして小鉢で出した。結果はどうだったかと言えば、もちろん美味しかった。テレビではドジャース対パドレスの、韓国で行なわれるメジャー開幕戦が中継されていた。大谷とダルビッシュの初対決ということで、これは観なけりゃいかんと思ってチャンネルを合わせていたが、いざ試合が始まると、数ヶ月ぶりに目にする野球は、そうか、そう言えば野球ってこういうものだったな、という、あまりなにを愉しめばいいのか分からない感じで、早々にチャンネルを切り替えた。選抜も始まったし、いよいよ球春ですね。
 そんな感じの、先週末からの日々でした。