ゆる週

 ピイガが今週、初めての宿泊行事、すなわち人生で初めて家族と離れて眠るというイベントに行って、無事に帰ってきた。なのでピイガのいない晩、わが家は夫婦と思春期真っ盛りの娘という3人で、まるで火が消えたようだった。ファルマンが、ピイガへの恋しさを訴える独白ばかりが、残りのふたりに完全に無視され、むなしく唱えられ続けた夜だった。
 行事でどんなことをしたのかは知らないが、疲労感もあり、さらには筋肉痛だとも言うので、この週末は天気こそよかったものの、ポルガもまた土日両日ともに部活だということもあり、特に大きな外出はせずのんびりと過すことにした。
 なにより車検という用件もあった。このたびフリードが初めての車検を迎え、この週末に1泊2日で作業してもらう算段になっていた。土曜日の午前中に車を店へ持っていき、代車で帰宅する。ちなみに代車はフィットだった。
 午後は夕方近くになって、ひとりプールへと繰り出す。今週はなんとなく気が乗らず、平日にいちども行かなかったのだった。行ったら行ったで気分はいいのだが、どうも今年の5月というのは総じてテンションの上がらない月間であった。来月からはすぱっと切り替えたいものだと思う。
 晩ごはんは、ミートドリアと、手羽先を揚げたもの。土曜恒例の朝市で、新鮮そうなアジが売られていたが、どうも魚の気分ではなかった。そして思案の末に繰り出した洋風のメニューは、なかなかよかった。やっぱり週末はパーティーメニューっぽいものがいいよな。
 ちなみにこの週末から、ファルマンの両親は青森に旅行に行っているらしい。ファルマンは、青森に行くなら斜陽館に行くべきだとおすすめをし、両親は娘の提案を受け入れたそうなのだが、今になってファルマンは、「両親は別に太宰ファンでもないのに、果たして行って愉しめるだろうか」と不安を抱いていた。しかし、まああの人たち(主に母)のことだから、行ったら行ったで自分がこれまでも熱心なファンだったかのように愉しめるに違いない、と自分で自分を安心させていた。たしかにそうだろうと僕も思う。若い頃は、浅くミーハーなそういった性分のことを、軽く見るところがあったけれど、実はその能力は、人生を愉しむ上で、とてもすばらしいものなのではないかと感じるようになってきた。この話の流れでファルマンと、いつか行きたい場所、食べたいものはあるかという話になって、僕はしばらく思案したのだけど、特に何も挙げることができなかった。結局、いわゆる「推し」というものがなにもないので、外の世界に強い魅力を感じることがないのだ。でもそれって、とても生きづらい生き方なんじゃないのか。回復アイテムを拒むモードでゲームをクリアしようとしているんじゃないのか、無意味に。特にこうやって、テンションの上がらない5月を過したりしていると、ことさらにそんなことを思う。
 翌日、車検が終わったフリードを回収する。車検代はやはりデデーン、という金額。もっとも今回はドライブレコーダーの取り付けを依頼したことで(品物はネットで買った)、その工賃も含まれているので余計に高いのである。ドライブレコーダーは、車を買ったときも、特に必要ないかな、と思って取り付けをしなかったのだけど、最近になって、別にヒヤリハットがあったというわけではないが、やっぱりあったほうが安心か、ということになって設置することにした。ネットでそれなりの商品を選び、取り付け作業をどうしたものかと考え、ネットで情報を見ると「がんばれば自分でできる」などと書いてあるが、決してできない(特にリアカメラは無理だ)ことを僕は知っているので、どこかしらのプロに頼むしかないなあと思っていたのだが、折よく車検というタイミングだったので、じゃあもうあちらさんに一緒にお願いしてしまうか、ということになったのだった。というわけで帰ってきたフリードには、ドライブレコーダーのモニターが設置されていた。プロの手によるので、もちろん配線なんかもすっきりしてなんの問題もない。いろんな意味で安心だ。
 それから午後は、本当に外出することなく、僕はいったいなにをして過しただろう、特になにをしたということもなく、ゆるゆるしてしまった。よろしくないな。でもよろしくないという自覚が持てているので、まあ良しとするか。どうだ、この力業の前向きさは。
 晩ごはんはハンバーグにし、付け合わせも彩りよく作ることができて、わりと満足感が強かった。明日からは天候が荒れるらしい。ぼちぼち風も強くなってきた。眠りが浅くなったら嫌だなと思いつつ、これから寝るまで愉しく過そうと思う。