会は2時間でパッと終わり、帰宅もスムーズだったが、いかんせんただでさえ疲弊している1週間の仕事後の飲みの席ということもあり、シャワーを浴びて、ファルマンたちが食べた親子丼が少し残っていたので、そうめんを茹でて上からかけ、親子にゅうめんにして啜っていたら、もう途中から舟を漕ぐほどに眠くなったため、3連休の幕開け前夜だというのに、普段と変わらないくらいの時間に寝就いた。
目が覚めたら、アラームもないのに起床時間もいつもと一緒だったので驚いた。体内時計アプリが完全に体にインストールされている、と思った。休みの日はいつも躍起になって夜更かしし、親の仇のように生活のリズムを崩そうとしてしまうが、もちろんそんなことはしないほうが断然いいのだ。休日なのに普段通りの時間に起きたら、午前中が長かったので得した気持ちになった。そして長い午前中は、いつものようにスーパーを巡って過した。ただしあまり収穫は芳しくなかった。じわり、じわりと物の値段が高くなり、それに呼応してじわり、じわりとこちらの購買意欲は下がっているのを感じる。
それとこの午前中に、部活のなかったポルガが「カラオケに行きたい。ひとりで」と言ってきたので、買い物のついででカラオケに連れていって、会員になるなどの受付まで立ち会ってやった。そしてポルガは人生初のひとりカラオケを堪能したようである。こんど友達と行くそうで、その予備練習ということらしい。そうか。まあ中学生ともなれば、もう家族とは行かないわな。寂しいけれど、それはそうだな、とも思う。行きの車で、「もしも中学生ひとりはダメだってお店で言われたら一緒に歌ってあげようか?」と訊ねたら、「その場合は帰る」という答えだった。なんかもう、すっかり中学生の娘だな。
午後になり、カラオケを終えたポルガの迎えは全員で出た。そのまま墓参りを行なった。こちらのお盆は8月ではなく7月なのである。3月に亡くなった義祖母にとっては新盆となり、ファルマンだけが明日、実家での催しに参加する予定がある。墓はこの午前に実家の面々が来たとのことで、花も真新しかった。一家で線香だけ上げ、辞する。
その帰宅後は慌ただしく歯を磨き、歯医者へ。実は1ヶ月ほど前から歯医者通いが始まっている。ふいに平日の休みがあった際に、その数日前に奥歯に痛みがあったため、せっかくだから診てもらいなよとファルマンに薦められ、しぶしぶ行ったところ、そのとき痛んだ奥歯は、大方の予想通り、取ろうと思ったら大学病院での手術レベルの処置になるタチの悪い生え方をしている親知らずが原因で、でもそれはもうそのときは痛みが引いていて、今後も適当にごまかしながら生きていくほかあるまい、という結論になったのだが、それ以外の箇所で複数の虫歯を指摘されたので、その治療をしていくことになったのである。今日はその3回目。毎回、2本ずつ虫歯を治されていて、虫歯というのはずいぶんライトに生まれ、そしてライトに除去されるものなのだな、と思った。時代か、僕か、なんかしらのフェーズが代わったのかもしれない。代わったのだろうな。子どもたちは、最初からフッ素を塗ってもらっていて、虫歯などほとんどないし、銀歯なんかもちろんない。ずるい。
そのあとは、晩ごはんの準備。実はこのあと、おろち湯ったり館へとひとり繰り出す予定を立てていたため、晩ごはんを作っておく必要があったのだ。それで、冷蔵庫から出すだけの、作り置きができるおかずはなんだろうと、午前中の買い物でずっと思案していたが、途中で「南蛮漬けだ!」と閃き、けれど豆アジが手に入らなかったので、豚肉で作ることにした。南蛮漬けはすばらしいアイディアだ、作り置きができるし、なにより気候にとても合っている。いま、とても食べたいじゃないか、南蛮漬け。おろち湯ったり館から帰ったあと、家で豚肉の南蛮漬けとビールだなんて、そんなのもう罰が当たるほどの幸福ではないか、とテンションがいや上がった。
というわけで夕方から、おろち湯ったり館へ。いつもの週末も、おろち湯ったり館への色気は常にあるのだが、もう1日休みがあれば絶対に行くんだけどなあ、と思いつつあきらめているので、待望の3連休に行かなければ、それはふだんの自分への裏切りだ。今回も男風呂はサウナが広いほうの木風呂だった。1週間ごとに男女で交代しているはずなのだが、最近やけに連続でこちらだ。もちろん広いに越したことはない。まだまだ日が長いので、はじめのうちは明るかった。雲が多く、暑くはなかったが、外気浴でベンチに横たわって眺めるその雲がまったく動いているように見えないほど、風がほとんどなく、外気浴の情趣は少し乏しかった。小雨でも降れば、それはそれで愉快なのだけど、それもなかったので、間の抜けた感じだった。あと習い事の集団なのか、小学生が大勢いたのも閉口した。閉口したけれど、閉口した素振りなどもちろんおくびにも出さない。小学生が集団でいたら、それはそれなりに騒がしくなるだろう。それは仕方ない。それは仕方ないけれど、それでもやっぱり、サウナは「中学生以下は使用禁止」とドアに書いてあるので侵入してこなかったが、水風呂に浸かって「冷てー!」と騒ぎ、水を掛け合ったりして遊ぶのは、さすがに引率の大人が一喝すべきではないかとは思った。しかしまあ、子どもなのでそう長くはおるまい、と思って耐えた。果たして子どもたちはやがていなくなった。そのあとは日も暮れ、なかなかいい時間を過せた。プールへももちろん行き、貸し切りでしばし泳いだ。結果として、おろち湯ったり館としては少しだけ得点が伸びなかった感があるけれど、しかしそれでも別の施設と較べれば十分すぎるほどの高得点である、という感じだった。また行こう。今後は日が短くなる。18時台に暮れなずむくらいのほうが、外気浴としては都合がいい。
家に帰って、待望の南蛮漬けでビールをやり、幸福に浸る。そしたらそのまま眠くなり、2日連続で舟を漕いでしまう。サウナのあとは殊に眠くなる。まあ起きていなければならない理由もないので、この日も平日のような時刻で眠りに就いた。健康的と言えば健康的であろう。
翌朝もだらけることなく早めに起きた。ポルガは午前中が部活だったので、その間にピイガと食料品の買い出しへ。済ませて帰ったあとは、ファルマンが実家での法事へと出かけていき、昼ごはんはそちらでの会食なので、われわれ3人は家で、買ってきた総菜パンやインスタントラーメンをもそもそと食べた。食べたあとポルガは学校の友達と遊ぶと言って近所の公園へ行き、やがてファルマンが帰ってきた。坊さんの話が長かった、という感想だった。まあお盆なんて坊さんの話を聞くだけの会みたいなものだから、そうなるわな。用意だけして、手を付けられなかった和菓子なんかがわが家に流れてくるかな、と期待していたが、残念ながらなかった。しばらくしたらポルガが帰ってくる。蚊にとても刺されたそうだ。雨上がりの公園で話していたそうなので、それは刺されるに決まっている。出発前に気にしてやればよかったが、思いが至らなかった。ただ、中学生なのだから自分でやれよ、という気もする。
午後はずっと家にいて、僕はなにをしていたかと言えば、ファルマンの服を作っていた。いよいよ最後の大詰めとして、ワンピースに取り掛かっているのだが、1枚だけワンピースであるのに加え、生地もかなり特殊なものを選んでしまったので、なかなか難儀していた。それでもなんとか形になったのだが、まだボタンのことなどをする前のものをファルマンに羽織らせてみたところ、これはなかなか着るハードルが高いかもな、という仕上がりで、うーむ、となる。ワンピースって、ちょっと賑やかな柄で作ると、途端にムームーっぽいというか、ソーラン節の法被みたいになるな。ちゃんと完成したら「nw」で報告しようと思う。
晩ごはんは手巻きずし。3連休の中日ということで、今日は早い時間からダラダラと、手巻きずしをしながら家族で桃鉄をやるという、とても優雅で満ち足りた時間を過そうではないかと画策していたのだった。期待通り、手巻きずしは美味しかったし、桃鉄はおもしろかった。家族とのこういう時間は本当に尊いと思う。
夜は、晩酌で2週間ぶりの「光る君へ」を観たあとも、ようやく舟を漕がず、起きていようと思えば起きていられるような感じだったが、無駄に夜更かしをしてもつらくなるだけだということは判っていたので、それなりの時刻に寝た。理性的な大人だ。
明けて3連休最終日の今日は、なんの予定も計画もなく、ポルガが午前の部活から帰ってきたあとで、ちょっとゲームセンターやショッピングセンターに出向いた。ゲームセンターでは、子どもたちはリズムゲームをやっていて、愉しそうだった。もしかしたら、と言うか、もしかしなくても、もう娘たちは、公園の遊具よりもこっちのほうが愉しいのかもしれないな、と思った。
帰宅後、買って帰ったブリーチ剤を、ファルマンにやってもらう。脱色はいつ以来かと検索したところ、去年の9月にその記述があり、そのあとにもう一度くらいやったのではないかという気もするが、近ごろはもうほとんど黒髪に戻っていた。それで、どうしようかなあ、また髪色を変えようかなあ、いや別にこのままでもいいかなあ、とこのところ大いに迷っていたのだが、今日ようやく決意し、やっぱり脱色することにした。というわけで、とりあえず金髪になる。ここから色を入れるかどうかは、まだ未定。
晩ごはんは、煮豚やフライドポテト、昨日の残りのアボカドでアボカド納豆や、同じく昨日の残りのたらこで餃子の皮のピザなど、得意のつまみいろいろ居酒屋献立。湿った重たい空気もあり、3日ともビールがとてもおいしい3連休だった。やっぱり3連休はいいな。GWの4連休のあとは、なんか精神のバランスを崩してしまったので、3連休くらいがいちばんいいのかもしれないな、と思った。