7月の暑さとパリ五輪と実家と泳ぎたさ

 とんでもなく暑い。真夏である。7月って、最近は夏というよりむしろ梅雨みたいな感じだよね、などと半月前くらいまでは感じていたけれど、最終的にはきちんと夏を仕上げてくる。さすがである。7月のスター性。異常気象という新世代の台頭には、決して屈しない。背負っている看板の重みが違う。
 そして夏というのは、こんなにもとてつもないものなのだな、としみじみと感じている。なぜか毎年きちんとそのことを忘れる。体感というのはわりと刹那的なものだ。それとも僕が特別、忘れっぽいのだろうか。5月終わりくらいの、よく晴れ、気温が30℃近くくらいまでなった日、30℃がこれくらいならば、真夏の猛暑日なんかも、まあ暑いは暑いだろうけど、でもそこまで騒ぎ立てするものでもないな、などと思っていた。とても40年生きてきた人間の発想と思えない。鳥なのか。人生の蓄積というものがなにもないのか。でもそのおかげでくじけずに生き続けられているのだとも思う。
 パリ五輪が、金曜日の夜中、土曜日の早朝に、開会していた。時差は8時間ということで、現地の夕方から始まった開会式は、週末とは言え、とても生で視聴しようとは思えないような時間帯なのであった。そして開会式を観ることができなかったオリンピックの、よそよそしさったらない。そもそもスポーツにそこまで興味がないわけで、オリンピックという大会でいちばん興味があるポイントはどこかと言えば、開会式とかなのである。だからもう、パリ五輪の情趣の8割くらいは、掻き消えたと言ってもいい。


 なんとなく、2021年にアップしていた干支4コマ(最終話)を再掲しておく。日本は貧乏くじを引いた、というのは疑いようのない事実で、実行委員会とか、演出家とか、出演者とかが、あんなにもゴタゴタしたのも、みんな新型コロナのストレスで気持ちがクサクサしていたからで、今ならみんなほがらかに、過去の少々の瑕疵など許容して、とにかくいま、より良いものを作り上げることだけを考えて動けたに違いないと思う。それはそれとして気になるのは、果たしてレディー・ガガやセリーヌ・ディオンは、障害のある同級生をいじめたりしていなかったのか、ということだ。
 土曜日の午前中はいつもの買い出し。しかし肉や魚を買うと、氷はもちろんもらうものの、なるべく早く帰らねばならず、あまり何軒も見て回れない。ササっと済ます。
 買い出しの最後に、ニトリに寄って椅子を受け取る。2週間前にファルマンが購入手続きをした、オフィスチェアである。これまで3年くらい、仕事用の椅子に対する不満を唱え続けてきたファルマンが、先日とうとうカタストロフィーが起ったことで、「いつか絶対に買ったるねん」と言い続けていた数万円のそれを、いよいよ買ったのであった。日々あまりに椅子の文句を垂れるものだから、どうせ買うんだから早く買えよ、とこちらもさんざん言い続けてきたわけだが、3年かかった。3年のうちに、世の中の物価は上がり、たぶん今回買った椅子も3年前のほうが定価が安かっただろうと思う。
 帰宅後に組み立て作業をし、ファルマンは座り心地に感動していた。もちろん店頭でさんざん検討しての購入なので、その良さは保証されていたのだけれども。ただし、しばし仕事をしたあと、「すごくいい。すごく快適。でも快適すぎて眠くなっちゃう」などとも言っている。それは知らん。ちなみにこれまで使用していた椅子は、僕に払い下げになった。ファルマンのように家で椅子に座って何時間も作業をするわけではない僕は、これまで適当な折りたたみ椅子を使っていたのだけど、ファルマンには見限られたこの椅子も、それよりは上等なものなので、じゃあ俺が使うよ、棄てるのも面倒な話だし、ということで受け取った。末永く使っていければと思う。
 午後は歯医者へ。今回の虫歯の治療で、とりあえずこのたびの治療計画は終わり。嬉しい。最後に先生から、「まあこの親知らず、やっぱり大学病院に行って抜いといたほうがいい気もしますけども……」と言われるが、やんわりとお断りした。
 それから夕方になり、ファルマンと注文していた鮨を店に取りに行き、そのまま実家へ。実家には次女とその娘たちが、早くも今週から帰省してきていて、じゃあ土曜の夜にみんなで鮨でも喰うか、ということになったのだった。今年はやけにハイペースで顔を合わせていた次女一家だったが、6月が初めて空いて、たぶん2ヶ月ぶりくらいの対面。それにしたって間が短いけれど。2歳児は寝起きでぐずり気味だったが、やはりかわいらしかった。2歳や3歳あたりまでのかわいさらしさというのは、フォルムの小ささはもちろんだが、魂胆や屈託みたいなものがない純粋さなのだな、などと思った。鮨はもちろんおいしかった。盆や正月じゃないので、セットメニューではなくお好みで頼めたので、選ぶのが愉しかった(こういうときの注文はいつからか一任されるようになっている)。
 夜は、帰ってきたら眠気が襲ってきて、舟を漕いでしまい、眠そうにしている人間が嫌いなファルマンにキレられながら、早々に寝就いた。
 明けて今日も暑い。子どもたちが科学館のイベントに行きたいというので、小4のいとこも実家で拾い、連れて行く。ファルマンが引率し、僕は送迎のみ。帰りにスーパーで買い物をして、晩ごはんを焼売にしよう、昨日の礼として実家に持っていけるし、と閃いたので、食材を買い集め、帰宅後は洗濯物を干したり、その下ごしらえなどをして過した。
 子どもたちを回収して昼ごはんを済ませ、午後からは家にいたのだが、果たして家にいていいのか、悩ましい時間を過した。すなわち、泳いだりしたいよ! という悩ましさである。実はいま、ホームプールの会員期間が切れてしまっていて、もちろん改めて会員になるつもりはあるのだが、なにぶん平日は暑さと労働で疲弊気味、そして休日は休日で大混雑でなかなか近付けないとなると、いまいち申し込みをするタイミングが見出せず、今日なんかもわざわざ大行列の中、新規会員申し込みだなんて、俺も嫌だし運営側も嫌だろうと思うと、とても行けやしないのだった。となれば、もういっそのこと海で泳ぐのはどうか、子どもも連れていくとなると大ごとになるので、俺ひとりでパッと行ってパッと帰るというのはどうか、と考えた。でもいかんせん暑すぎる。陽射しが強すぎる。海水浴とはそういうものだ、と言われればそれまでだけど、やはり慣れない身としては尻込みした。というわけで、泳ぎたさに身を焦がし、悶々としつつ、結局は泳ぐことのない週末だった。
 晩ごはんは焼売。実家にも30個分持っていった。干し椎茸、メンマも入れた本格味。もちろんおいしかった。子どもの送迎以外、特に何をしたということもない1日だったけど、とにかく暑かったので、ビールが無上においしかった。