大きな公園に行って遊び、お弁当を外で食べる、というのが至上命題であったわけだけど、その一方で、松江にある県立図書館に行きたいという個人的な希望もあり、この両立にとても腐心した。というのも、松江方面にはそういう、小学校高学年と中学生を満足させるような、アスレチックやアクティビティのある大規模な公園というものが、まるでないのだ。松江って本当に、身内なのか外部者なのか我ながら判断がつかない立場からいうのだけど、なんか絶妙にうまいこといっていない街で、大都会でもなければ田舎でもなく、どちらのメリットも見事に取りこぼしている感があって、今回の目的地選びでもしみじみとそれを痛感した。いっそのこと隣接する安来市や鳥取県は境港市、さらには米子市まで足を延ばして、ファルマンも子どものみぎりに遊んだという、大型アスレチックのある大山まで行くのはどうかとさえ考えたのだが、さすがにそれは1日の行程としてはハード過ぎるだろうと考え、やめた。結果として、遊具的なことはすっぱり諦め、松江市街にある、とりあえず野原はありそうな公園に目星をつけた。ちなみに地図を眺めているときに目についた島根大学が、もしかしてと思い検索したところ、学園祭はこの3連休の後半2日だったので非常に惜しかった。去年の広島大学のようなことにはならなかった。ちなみにわが家は、なんだかんだでこれまで岡山大学、広島大学と学園祭に行っているのだった。別に強い情熱があるわけではぜんぜんないのだが。
というわけで、とにかく松江に向けて出発である。出発前、おにぎりを拵える。ずいぶん久しぶりだ。一家でのお出掛けの前におにぎりを仕立てるという、その行為が好きである。そしてそういうことに固執するから、子どもが育ってその機会が失われつつあることに寂しさを感じ、厄介なのだと我ながら思う。
行程は、まず県立図書館。ドライブも兼ねて、高速道路は使わず地道で行く。昨晩に新しいプレイリストを作ってみんなで曲を入れたのだが、シャッフル再生した曲は前半、なぜか僕とファルマンのものばかりが立て続けに流れ、しかもその選曲は嫌がらせのように盛り上がらないものだったので(僕は最近お気に入りに追加した曲を中心に入れたのだが、客観視して初めて、近ごろの自分がダウナーな感じの女性シンガーの曲ばかりを聴いているということに気付いた)、残念だった。専用のプレイリストを作って家族でドライブという行為に、移動がやけに愉しかった夏の帰省の幻影を見てしまっているのかもしれないと思った。宍道湖は陽射しに照らされてきれいだった。
島根県立図書館に来たのは、実は初めてではない。初めて来たのは第一次島根移住の際で、確認したら2012年9月のことであった。実に12年前。辰年のときだけ来る一家。12年前なので、行く前はぜんぜん当時の情景が思い出せなかったが、行ってみたら、そう言えばこんな感じだったかな、という感じがあった。前回ここに来たのは、ファルマンの仕事の資料がここにしかなかったからだったが、今回の来訪の目的は主に僕で、仕事ではなく趣味の、いわゆる性的だったりする本が、検索すると県内でここにしかない、というのが数点出てきたので、行くっきゃないとなったのだった。そして、いちど行って利用者カードさえ作れば、あとは地元の市立図書館で受け取りや返却ができる仕組みがあるに違いないという狙いもあった。入館し、まず申し込みをする。用紙に記入をしてカウンターに持っていくと、「おふたりは既にカードを作られていますね」と言われたので驚いた。当時は実家の住所だし、なにしろもう12年間利用がなかったのだから、てっきり失効になっているものと思っていた。これで失効にならないのだとしたら、死去した人間のデータも残り続けるわけで、いつか県立図書館の利用登録者数は日本の人口を超えるのではなかろうか(1日に5人くらいは増えているだろう)。おかげで僕とファルマンのカードだけは、ラミネートなしの仮発行のものとなり、「家で以前のものを探してください」と言われてしまった。そんな出来事もありつつ、しかし県立図書館の蔵書はやはりなかなか充実していて、あらかじめメモしてきたものに加え、その本のある書棚に行けば、その近辺にも見逃せないものがあったりして、とてもいい収穫だった。わざわざ行った果以があった。ちなみに今回の本から早速、返却は市立図書館でできる仕組みでの貸し出し処理をしてもらったので、今後こちらまで足を運ぶ機会はそうそうないだろうとは思う。
図書館のあとは、昼ごはんを食べるために公園へと向かう。悩んだ末に選んだのは、松江の中心地から少し東側にある、楽山公園という所。遊具がないというのは織り込み済みだったが、緑豊かな遊歩道があります、といった感じで紹介されていたので、それならばいい景観で弁当を食べるようなスポットもあるだろうと思ったのだった。ところが、である。駐車場に車を停め、こちらがたぶん公園エリアということだよなあ、というほうへ足を進めてみると、あまり整備されていない感じの、饐えた臭いのする池と、ひたすら生い茂るうす暗い林ばかりで、とても食事ができるような感じではなかった。もちろん子ども連れなど誰もいない。奥に野球場があり、少し覗いたら草野球をやっていたが、それも完全に選手ばかりで、周辺で選手の家族がピクニック気分で和気あいあい、ということも一切なく、なんだか非常にエンタメ性のない、必要最低限の、こう言っては何だが、非常に松江らしい要素の横溢した公園であった。仕方なく駐車場のほうへ戻り、仕方ないから車で食べようかねえ、などと話していたが、駐車場の脇あたりは、それでもいちおう野原のようになっていて、座るための場所などもあったので、そこで食べることにした。車を降りて、公園に繰り出す前には、目に入らなかった場所。でも実はそこがこの公園のピークであったという。ロケーションとしてはそんな感じだったが、それでも外でごはんを食べるという目的は果たせた。この予定に合わせて昨日の晩のメニューとした唐揚げの残りも含め、おいしく食べた。たとえこんなおかしな場所でも、外で食べるごはんはおいしい。
そのあとは松江イオン。生地はさすがに買わなかった。ゲームセンターに行って、ポルガは音ゲーをし、ファルマンとピイガはクレーンで遊んでいた。珍しくふたりとも景品をゲットすることができ、特にファルマンはドーパミンをドバドバ出している感じでおそろしかった。おやつのミスドを買って帰る。ミスドはおらが町にだってあるけれど。
帰りは高速道路。4時前には家にたどり着くことができた。久々に一家の予定の合った休日の外出として、十全であったような、もうちょっと高みを目指せたような、この微妙な感じこそ、まさに松江といった感じだな、という1日であった。