ギャンブルめいた日

 土曜日は部活だったり科学クラブだったりした子どもたちが、日曜日はふたりとも家にいて、どこかへ連れていけと朝からうるさかった。しかしまだまだ異常な暑さは続いているので、もちろん公園などの屋外施設になんか行けない。それで思案した挙句、ちょっと離れた場所にある大型書店と、その周辺の遊び場へと繰り出した。
 書店は、近ごろショッピングモールの中にあるような所にしか行っていなかったが、久しぶりにちゃんとした大型書店に行ったら、わりと愉しかった。書店というものを、もうほとんど過去の就業時代のことを忘れて、純粋に愉しめるようになったのだな、と思った。大型書店には文房具屋も併設されていて、いまどきの新しいグッズもありつつ、その一方でGペンだったりスクリーントーンだったり、大昔から置きっ放しなのだろうコーナーなんかもあって、おもしろかった。スクリーントーンというものを目にしたのは何年ぶりだろうか。この文房具屋で、消しゴムはんこの、透明ver.というものを初めて目にし、思わず購ってしまう。見た瞬間にテンションがぶち上がり、家に帰るなり彫り始めた、ということは別にないのだが、とりあえず買っておこうと思った。色を重ねて押すのに便利だろうと思う。使うべき時が来たら使おう。
 本屋のあとは、すぐそばにクレーンゲームの専門店があり、そちらにも立ち寄った。ゲームセンターと違い、本当にクレーンゲームだけが並ぶ、おもしろい空間だった。多様な景品の種類があり、どれも1プレイ100円だというので、とりあえず子どもたちに200円ずつ渡してやる。物色しながら店内を巡ると、あえなく失敗している人もいれば、袋に一杯の景品をぶら下げている人もいて、なかなかテクニックがものを言うようだな、と思った。ピイガはゴリラの人形があったのでそれに挑戦したが、落とすことはできなかった。そもそもあまりピイガは入れ込んでいない様子で、どうもギャンブル的な、お金を使っても失敗したらなにも返ってこない、という仕組みが、この子は好きではないらしかった。ポルガはさんざん悩んだ結果、ドラえもんがプリントされたどら焼き型の巨大クッションに挑戦し、2回失敗したが、なんかやけにいけそうな感じがあったので、思わず100円を追加してやったら、なんと3回目にアームががっちりとクッションを掴み、そのまま取り出し口へと運んでくれたのだった。せっかくだからなんか持って帰りたいけど、たぶん無理だろうね、などと話していたが、かくしてわりと豪華な景品をゲットしたのだった。ビギナーズラックというか、あとでファルマンがネットで検索したところ、この手のクレーンゲームは、一定のタイミングでアームが本気を出す仕様になっているようで、その前の、他人も含めた数々の失敗によって、そのゲージが一杯になり、このときにちょうど発動したのではないかということだった。胡散臭いというか、なんとも射幸心を煽る仕組みだな。とは言え戦利品が手に入ったのはよかった。いい思い出になった。
 そのあとショッピングモールにも寄り、こちらのガシャポンコーナーで、ピイガに1回だけ回させてやる。ピイガはクレーンゲームより、お金を入れれば必ずなにがしかの景品が手に入るこちらのほうが趣味に合っているらしい。堅実で悪くないと思う。
 それとここのダイソーに、他のダイソーでは見つからなかった、ブラックジャックグッズに合わせて発売された、手塚漫画のキャラクターの、缶バッジや、アクリルスタンドや、キーチェーンも販売されていて、それぞれどの絵柄が出るかは開けてのお愉しみなのだが、それぞれを3つずつほど買った。家に帰ってから開封したところ、「鉄腕アトム」と「三つ目がとおる」がやけに出て、しかしブラックジャックもそれぞれ1個ずつは出て、まあ、まあまあかな、という出目だった。「火の鳥」か「ブッダ」が出てくれたら嬉しかったのだけど、なんとなくそこらへんは絶対数が少なそうな気がする。たぶんアトムが多そうだと思う。
 行き場所をあぐね、苦し紛れに向かったわりには、かなり有意義に愉しめた外出となった。そして、やけにギャンブルめいたお金の使い方をした1日だった。